10
クラスメイトたちが口々に危険だと言っているので、空は取り敢えず様子を窺うことにした。
「ありゃあ、またか」
空の隣にやってきた十夜は、そう言って空笑いすると頭をかいた。
また、という言葉に、これが初めてじゃないようなニュアンスを感じた空は、どういうことなのか聞き出そうと口を開く。
「それって――」
「あ、」
十夜の声に、空はすぐさま窓の外に視線を戻す。
すると、一際派手な赤い髪をした男が、黒高の集団から姿を現した。
「鴉間ー!出て来いやぁあああ!」
その男は出て来るなり校舎に向かって怒声を放った。
………鴉間。
空は瞬時に十夜へと視線を向ける。
「いや、俺じゃないよ」
ジトっとした視線を受け苦笑して首を振る十夜。
十夜じゃないとしたら、この高校にいる鴉間はあと二人…
「あ、誰か出てきたぞ」
一人の生徒が指さした先には、真っ直ぐ黒高の集団へと向かって行く後ろ姿があった。
長身の金髪。
ポケットに手を突っ込み、だるそうに歩くその姿は誰もが知っていた。
空もそれに気付き「あ、遊二だ。おーい!」と暢気に手を振る。
遊二は聞こえているのか聞こえていないのか、振り返らないまま赤髪の元へ向かった。
「なんだ、あいつら遊二の知り合いか」
「んー、ある意味ね」
不可解な十夜の返答に眉を寄せた空だったが、遊二の知り合いであれば危険なことはないだろうと鞄を掴み立ち上がると、すかさず蓮城に手首を掴まれた。
「ダメ、危ない」
「知るかよ。俺は帰りたい時に帰る」
待つことが大嫌いな空は、これ以上用のない教室に居続けるのは我慢出来なかった。
何が危険であるかもわからない空は、理由を聞くのも億劫で、苛々と蓮城の手を払い退けると、教室の入り口へと向かう。
「空!」
「空っちー、おいてかないでよぉ」
引き留めることを諦めた蓮城は慌てて空のあとを追う。好奇心旺盛な十夜も、何だか面白いことになりそうだな、という単純な理由で着いて行くことにしたのだった。
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