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何だかんだで三人揃って体育館へと向かうこととなった一同は、人気のない廊下をのんびりと闊歩していた。
入学式まで時間も迫っていたが、三人揃ってマイペースなため急ごうとする者はいない。
「あ、そう言えば担任見たー?」
「何言ってんだ、鉞持った金太郎じゃねぇか。かっけーよなぁ…」
「金太郎なの?オカッパってこと?俺、ファンの子達がうるさいからトイレ行ってて見てないんだよねぇ」
どうやら十夜はあの時教室にはいなかったらしい。
殺伐とした空間から逃れた唯一の人間だ。
鉞の顔を知らない十夜は「早くオカッパ見たいなー」と無邪気に笑う。
断じて鉞はオカッパではないが、説明するのも面倒な空は「うん」と適当に相槌をうつ。
横で会話を聞いていた蓮城は、あの人オカッパだったっけ?と首を捻るが、既に記憶が曖昧なため鉞の顔が思い出せない。
早々に思い出すことを放棄した蓮城は、空がオカッパだと言うのならオカッパなのだろうと思うことにしたのだった。
「あーあ、殆ど同じ奴らなのに入学式する意味あんのかねぇ」
「俺は新入生だ。例え金で物言わせて入ったにしろ」
「……」
怠けたように欠伸をもらす十夜に、すかさず指摘した空は堂々と裏口入学を暴露する。
蓮城は空耳か、と思うことでスルーし、遠くのほうから聞こえてくる何かに耳を傾けた。
「……何か、聞こえる」
「そうかぁ?」
「これって……………校歌じゃない?」
……………。
長い沈黙のあと、すべてを諦めた空が口を開いた。
「だっせぇ歌」
「そう?どこも一緒じゃない?」
「まぁな。何で校歌ってだせぇんだろ。俺ロックっぽいのがいい」
「えー、俺はレゲェがいいなぁ」
「……俺、“R&B”」
「クマ、なんか発音よくね?」
「海外、住んでた」
「あぁ、だからちょっと訛りがあるんだねぇ」
「日本語、難しい」
「十分ペラペラじゃねぇか」
空の言葉に嬉しそうにはにかむ蓮城。
開け放たれた窓からは未だに体育館のほうから校歌が聞こえてくるが、現実逃避中の彼らの歩調は変わらない。
三人の間にだけ、穏やかな時間が流れていた。
体育館に到着した頃には既に入学式も終盤をむかえていた(当たり前)。
「こんのバカ共がぁああ!!」
気まずそうに三人が佇んでいると、猛スピードでやってきたオカッパ、いや魔王鉞に拳骨をくらわされ、引き摺られるようにして席に座らされたのだった。
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