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何だか青春ドラマのような状況になりかけていた時だった。

ガラ、ドンッ・・!


乱暴にドアを開け放って教室に入ってきた人物に全員が顔を向ける。


そこには、サングラスをかけ口髭を生やしだらしなく縦縞のスーツを着込んだいかにもヤ●ザさんな人が立っていた。



「「………」」



一瞬で静まり返った1-1の住人たち。

みなの頭に『なんで学校にヤーさんが?』という疑問が浮かぶ。



男は教室を見渡すと、ツカツカと教卓にたち、ドスのきいた声で叫んだ。


「おいテメェらぁあ!!」


ビクリッ、と何人かが肩を揺らし、そして何人かがチビりそうになる。


このあとに続く言葉はきっと『血祭りにすんぞゴラァア!』だと全員が思った瞬間だった。



しかし、男は予想に反して黒板に向き直ると、チョークを一本手に取り、風貌からは信じられないような綺麗な字でこう書きだした。


“鉞 太郎”と。



「マサカリタロウ、今日からテメェらの担任だ。一秒で覚えろ」


有無を言わせないその威圧的な物言いに、クラスメイトたちは無言で頷きそそくさと席につきだす。



「テメェら一年にしちゃよくできるじゃねぇか」

従順な生徒たちに満足げに鼻を鳴らす鉞。


常人であれば、鉞が絶対に逆らってはいけない人だということは一瞬で判断出来るだろう。
現に、生徒たちの反応を見ればそれは明らか。


だが、ここには空気が読めない男が一人いることを、誰も知らない。




「鉞持った金太郎…」



教室の後方で呟やかれた声に、全員が一斉に視線を向ける。


誰もが突っ込みたかったことをズバリと言ってみせた男が、そこにはいた。

平然とした顔で「鉞って字、意外と難しいな…」なんて首を捻っている。





「何か、言ったか?」


鉞の米かみに青筋が浮かぶ。

地獄からの断末魔が聞こえてきそうなほど恐ろしいオーラを撒き散らせながら、鉞はゆっくりと、空に向かって歩きだした。



コツ、コツ、コツ、



鉞の足音だけが鳴る教室内。



「(………ゴクンッ)」

鉞が空の席まで辿り着いた瞬間、緊迫した空気の中で全員が唾を飲み込んだ。





「お前さっき、何て言った?」

サングラスを外し、静かに空に問い掛ける鉞。
こんな状況でなければ、ホモ属性の生徒たちから『カッコいい〜!』と黄色い声があがっていたことだろう。
それほど、鉞の容姿は整っていた。




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