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その風貌とは裏腹に、蓮城の内面は実に大人しく、口数が少ないのも、ただ単に海外生活が長かったため日本語が苦手なだけだった。

だが、殆どの人間が見た目で判断してしまうのは仕方のないこと。

一人歩きしてしまった噂のせいで、柄の悪い奴らに絡まれることも多く、不本意な言い分で絡まれてばかりいる可哀想な蓮城。

しかし幸か不幸か、悲しさで強張る蓮城の顔は、元々恐持てであることも相まって、更に凶悪さを増し、そんな鬼のような形相に、威勢よく突っかかってきた不良たちも、恐怖におののき逃げ去って行くのだった。

つまり、蓮城はこの顔のお陰(?)で、一度たりとも喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。

ある意味、百戦錬磨だ。

いつも無傷で帰ってくる蓮城に、いつしか『鉄壁の暴君』という通り名がつけられていた。


そんなことを知るよしもない鉄壁の暴君こと蓮城は、初めて自分に怯えずごく普通に話してくれた空に、嬉しさのあまり顔を綻ばせていた。

『おい、蓮城さんの顔見てみろよ…』
『怖ぇえぇ。鬼がいる。目が合ったら石になんぞ!』
『あいつ何蓮城さんのこと怒らせてんだよ!』
『死ぬな、確実に。拝んどこう』

まさかあれが蓮城の嬉しい時の顔などとは知りもしないクラスメイトたちは、空に向け心の中で合掌をしだした。




「そ、空…外部生?」
「あ?なんだ、ガイブセイって」
「えと…中等部からじゃ、ない人」
「あぁ、そうだ」

空の答えに、蓮城は「だからか…」ともらす。
空が何がだ、とでもいう風に眉を潜めると、蓮城は伏し目がちに

「…俺と、普通に、話してくれる」
「あ?意味わかんねぇ。クマはそんなに偉れぇのかよ」
「ち、違う!みんな、俺のこと、怖いって…」

しゅん、と項垂れる蓮城に、空は軽く息を吐き出すと、その長めの黒髪に手を置いた。
少し硬めの髪を撫でつけながら、何かに怯えてるように瞳を揺らす蓮城に、空はふっと笑いかける。

「クマは、怖くねぇよ」

しっかりと、胸に響くその言葉に、蓮城は唇を震わせた。

何とか口を動かして、情けないほど小さな声で、

やっと、「ありがとう」と言えたのだった。





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