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一也の薦め(裏口とも言う)で高校に通うことになった空は、真新しい制服に袖を通し胸を弾ませていた。
今日は待ちに待った入学式。
だが、使用人である空が金持ちが多く通う和光(ワコウ)高等学校に入るには、それなりに理由が必要だったため建前上は、十夜の世話役ということになった。
そういった、使用人を連れて入学してくる金持ちの子息は少なくないらしい。
しかし一人だけ空の入学に納得いかない者がいた。
「いいか、一つだけ約束しろ。学校では俺と貴様は赤の他人、わかったか?」
同じ制服を着こんだ九音が玄関で靴を穿いていた空に向かって言い聞かせるように言った。
これで五度目だ。
隣で同じく靴を穿いていた十夜はしつこい九音に呆れたように溜息を吐いた。
「九音、空っちだってバカじゃないんだからそう何回も言わなくたってわかってるよ」
ね?と十夜が空に窺う。
けれどこれから通うことになる高校に浮かれまくりな空の耳には全く届いていなかった。
「…夕日に向かって走る、これぞ青春」
訳のわからないことを呟いてフフフッと不気味に笑う空に、九音は汚い者でも見るように顔を歪ませた。
「やはりこいつは信用できん。学校内で俺の品格を損なうことがないよう十夜、ちゃんとこいつを見張ってろよ?」
「言われなくたってそうするさぁ。空っちは俺のだもーん」
「フンッ、そんな雑食までイケるとは変わった奴だ」
「九音は空っちの良さがわかってないなぁ。まぁ、わからなくていいんだけど」
十夜はにんまりと笑うと、妄想にふける空の手を掴み、訝しげな視線を寄越す九音を残して学校へと向かったのだった。
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