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「でもさ、それって俺に言っちゃって良かったの?親父は知られたくないから、俺を売った、なんて嘘ついたんだろ?」

『いいんだよ。あいつはアホだからもうそんなこと忘れてるよ』

そう言ってカラカラと笑う一也に、さすがに兄弟なだけあってよくわかってるなと思う空であった。

『だからね、もう君が使用人として働く必要はないんだよ。最初から僕は、君に普通の暮らしをさせたかっただけだしね。』

「……」

空は考えた。
ここでセレブな暮らしをするのは、そりゃあ気分がいいだろう。
けれど、使用人という仕事もそれなりに楽しんでいる空にとって、それが出来なくなるのは惜しい気がした。

九音、遊二、十夜、三貴…四人の従兄弟たちだって、真実を知れば自分を見る目が変わってしまうだろう。
使用人だからこそ、出来ることも言えることもある。

結論はすんなりとでた。


「このままでいたい」


空の言葉に、一也は『わかったよ』と電話越しに微笑んだのだった。





『あ、空くん。いい忘れていたんだけど、高校に行かないかい?』

通話を切る直前、一也が思い出したように空を呼び止めた。

「いつ?今度は誰の授業参観?次は父親役がいいなぁ」

訳のわからないことをいう空を無視して一也は続けた。

『違うよ。高校に進学しないかい?って言ったんだよ』
「え…俺が?でも中学中退しちゃったし、出来んの?それに俺、自慢じゃないけど勉強全く出来ない」
『鴉間家の力を使えばできないことはないよ』

何だか危ないことをいう一也に、空は昨日も感じた黒い部分を垣間見た気がした。

「んじゃ、行きたい」
『わかった。こちらで手配しとこう』



一也との通話を終えた空は、あまりの嬉しさに

「よーーう、」
パンッ

一本締めをした。
喜びを表現するにはかなり地味すぎる。

だけど、その顔は…


(空さん何だか嬉しそう…)

影に身を潜め二個目のソフトクリームを食べていた三貴は空につられるように笑ったのだった。




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