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空は覚悟を決めた。
今さら狼狽えても後の祭りだ。



この手の訪問者には慣れている空は「はいはーい」と軽く返事をすると、玄関の戸を開けた。



「なんだよ、いるじゃねーか。ったく、さっさと出やがれ」

「すいませんねー。で、ご用件は?」

「鷲尾の息子はテメェか?」

「そうだけど…」



スーツを着た明らかに凶悪そうな顔つきの男は、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべた。

そして胸ポケットに手を入れると拳銃、いや一枚の紙切れを取りだすと、それを空に押し付けた。



「この場所に行け」

「は?」


訳がわからず首を傾げる。

取り敢えず折り畳んである紙切れを広げてみると、そこに書かれていたのはどこかへの地図のようだった。


男の指示に空が困惑していると、男はズカズカと家の中へ土足で入り込み眠たそうに目を擦っていた五郎の腕を掴んだ。



「おい、何してんだ!」

「お前が逃げないように、そこにたどり着くまで人質にこいつを連れてくぜ。」

「大阪か?」

「親父は黙ってろ」

「とにかくそこへ行けばわかる。無事に返して欲しければそこへ行きな。もっとも、テメェは売られた身だ。こいつとは二度と会う事は出来ねーだろうがな」



ブハハと悪者染みた笑い声をあげながら、借金取りAは五郎を引き摺りながら去って行った。


去り際に五郎が見せたブイサインの意味がわからず頭を抱える空。


大阪へ連れてってくれるとでも思ったのだろうか…。



「畜生、親父…必ず助けてやるからな!」


空は不甲斐ない自分を嘆いて拳を打ち付けたあと、地図を手に身一つで家を飛び出したのだった――。





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