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『空くん』

空の携帯にかけてきた相手は、雇い主である一也だった。
この携帯自体、貧乏で携帯すら持っていなかったアナログ人間空に、何かと不便だろうと思った一也が渡したものなのだから、必然的にかけてくる一也だけとなる。

「ん、何」
『今日、三貴の授業参観に行ってくれたそうじゃないか。ありがとう』
「……何で知ってんの?」

阿呆ながらやけに勘だけはいい空は疑問に思った。
今しがた帰宅したばかりだというのに、どうしてそのことを一也が知っているのか、と。

『五郎に会っただろ?』

五郎、と聞いてますます疑問が深まる空。
金を貸し借りするだけの間柄なら、親しげに名前を呼ぶなんておかしい。

「会った。もしかして、親父に頼んだのって一也さん?」
『あぁ。仕事で行けないんで代わりに行ってもらったんだが、その必要はなかったみたいだね』
「うん、遊二と一緒に行ったんだ。結構楽しかった。」

まさか空が母親役として女装して行ったとは思ってもみない一也は『そうかそうか』と微笑ましげに返す。




「ねぇ一也さんて…親父とはどういう関係なの?」
『……』

唐突に切り出した空に、今まで笑っていた一也は口を閉ざした。
すぐに返ってこない返答に、携帯を握る手に力が入る空。

(まさか…)

「もしかして、俺って実は一也さんの息子ってことは――」
『それはないよ』

淡い期待はばっさり切り捨てられた。
やはり自分はあのアホの血を受け継いでしまってるのか、と空はガックリ肩をおとした。


『でも、少なからず血は繋がってるよ』
「へ………」

ポカンとする空の反応に、一也はハァと溜息を吐き出した。

『やっぱり気付いてなかったんだね。僕の顔を見ればすぐに気付くと思ったんだけど…』

顔、と聞いて、空は昨日見た一也の顔を思い出してみた。

品のいい美形なおじ様。

だけどそれが何を意味しているのか、さっぱりわからない。





『僕と五郎はね、兄弟なんだよ』



「ん?」



空は聞き間違いだと思った。
携帯の電波が悪いのかと思い、ブンブンと振り回したあともう一度耳にあてがう。

「ごめん、聞こえなかった。もう一回」

『五郎は僕の兄さんなんだよ』

(……二位さん?)

空は一瞬、五郎と一也が何かの勝負をしたのかと思った。

『黙っていてごめんね。』

一也は申し訳なさそうに声をおとすと、事の成り行きを話し出した。




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あきゅろす。
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