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暫くの間、小学六年生の算数に真剣に聞き入っていた空だったが、授業も終盤に差し迫っているという頃。
今頃になって教室に入ってきた不審な人物がいたのでふと目を向ける。
と、そこには知った顔があった。

女装しているからか、あちらは空の存在には全く気付いていない様子で、教室内をしきりに見渡している。
顔はそれなりに美形なのに服装は上下スウェットとミスマッチな出で立ちに、周りも若干引き気味だ。

(何やってんだ、あいつ)


空は相手に近付いていくと、さりげない動作で腕を掴みそのまま廊下へと連れ出した。



人気のない場所まで来ると、空は相手の腕を離した。

「何か用か」
「高級羽毛布団が今なら30万円!買って頂けませんか?」
「よし、買おう」
「……」

このすぐ騙されるアホさ加減はまさに、と空は確信を得た。
目の前の人物の血を半分受け継いでると思うと残念なことこの上ない。

「こんなとこで何やってんだ、クソ親父」

「……あぁ、空か」

自分の息子が女装している事実を知っても五郎の表情はピクリともしない。

借金のカタに売られもう会うこともないだろうと思っていた父親とバッタリ出会すなんて、何か裏を感じた空は探るような視線を五郎へと向けた。

「どうしてテメェがここにいんだよ」
「話すと長くなる」
「面倒臭がらずに話せ」

空の追及に、五郎は面倒くさそうに溜め息を吐いた。

「実は、ある人に頼まれたんだ」
「頼まれた?何を」
「自分の息子の授業参観に代わりに行ってくれと」
「……」

五郎の(狭ーい)交友関係の中で、そんな頼み事をするような人物がいただろうか、と空は首を捻る。




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