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初の女装にウキウキな空と、嫌々ついてきた遊二がやってきたのは三貴が通う私立小学校。
授業参観ともあって、廊下を歩く子供の親たちがチラホラと目につく。

その親たちは揃って、いきなり現れた目立つ二人の存在に、ジロジロと好奇な視線を向けた。

一人は高貴なお嬢様。
もう一人は長身のイケメン。

仲睦まじげに腕を組んで歩く姿はとても絵になっていた。


「おい、腕を組む必要はねぇだろ」
「ラブラブな夫婦という設定だ」
「そんな設定いらねぇよ!」

と乱暴に腕を振りほどいた遊二に、空は「また我が儘言ってー」と呆れた様子で溜め息を吐き出す。

そんな空に、殴りたい衝動をぐっと耐える遊二が苛々しながらある教室に目を向けると、見知った顔を見つけた。

「ここだぞ」
「あ、ホントだ」

教室の中心で授業を真剣に聞いている三貴を見つけた二人は、後ろのドアから教室内へと入って行く。






三貴は終始ソワソワしていた。
授業を聞いているフリをしてはいるが、教師の言葉は耳から耳へとすり抜けていく。
背後が気になって仕方がない。
授業参観が始まってから何度も教師の目を盗んで振り返ってみるが、目的の姿はない。

(もう来てもいい頃だと思うけど…来れなくなっちゃったのかな)

そう三貴が不安になりかけた時
ザワッ・・・

教室中に妙なざわめきが起こった。
教師も授業を中断して後ろを見据えている。

それにつられるように振り向くと、目に飛び込んできたのは不機嫌そうな二番目の兄の姿だった。

(…なんで遊二にぃが?)

てっきり空が来ると思っていた三貴は首を傾げた。

(それに、隣の人誰だろう…遊二にぃの彼女かな)

仲良さそうに寄り添う二人を見て、そんなことを考えていた三貴と目が合った空は微笑んで小さく手を振る。
授業参観でよく見かける風景だ。

が、まさか空だとは思ってもみない三貴は戸惑い気味にペコッと頭を下げた。

「ねぇ、あれって鴉間くんのパパとママ!?」

「え、いや…」

隣に座る女の子が小声で三貴に聞く。
女の子と喋ることに慣れていない三貴が口ごもっていると、

「いいなぁ、可愛いママと格好いいパパで!」

羨ましい、と勝手に解釈したらしい女の子の言葉に、三貴は違うとすぐに否定出来なかった。
羨ましがられたことなど一度もない三貴は、嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい気持ちのままもう一度後ろを振り向く。

すると


「三貴、問三は92だぞ」
「テメェ答え言ってどうする!しかも間違ってんじゃねぇか!」
「マジかよ。算数苦手なんだよなぁ…」
「だったら余計なこと喋んな、うぜぇ」

人目もはばからずやんやと言い合う二人。
周りの親たちは苦笑いMAXだ。

(あれ…今の声って…)

三貴はそこでようやく見知らぬ人物だと思っていた女の正体に気づく。

気付いた瞬間、とてつもなく恥ずかしくなった。

なんで空は女装などしてきたのか、もしクラスメイトたちに空が男だとバレれば馬鹿にされるのは目に見えている。


「だからどうすればその答えになんだよ」
「知るかよ、遊二が間違ってんだろ」
「あ?お前よりバカなわけあっかよ」
「自慢じゃねぇが俺中学中退」
「ホント自慢になってねぇな」

一気に血の気が引いていく三貴を尻目に、二人はまだ言い争いを繰り広げていた。

(二人とも早く帰って…!)

三貴は切に願ったのだった。




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