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空はもう五郎に無駄な期待なんかするもんか、と心に決めた。
自分の身は自分で守ってみせる。
金で売られたのなら、金で取り戻せばいいのだ。



「親父、借金っていくら?」

「大体1億円」

「……テメェ、マジいっぺん死ね」


莫大だ、莫大すぎる。

いつの間にそんなに借金が膨れ上がっていたのか。

空は軽く放心した。


すぐに作れる金ではない。
体の一部を闇で売ったって足りないくらいだ。



空は目の前が真っ暗になった。

借金のカタにさせられたということは、延々死ぬまでタダ働きでこき遣われるということだ。




……夜逃げしかない。

空は勢い良く立ち上がった。


「親父、今すぐ逃げんぞ。荷物まとめろ」

「えー」


険しい表情で告げた空に、五郎は不満げな声をもらす。
どうやら面倒臭いようだ。

それを象徴するかのように、ダラリと力なく横たわり駄々っ子のように足をバタつかせている。


空はそんな五郎を見てイラッとした。

軽く足で踏みつけて「早くしやがれ」と促すと、五郎も渋々起き上がる。




荷造りするほど物もないので、空は数枚の着替えをバックに詰め込み五郎はお気に入りのちゃぶ台を脇に抱え夜逃げの準備は万全だ。


「よし親父、出るぞ」

「わかった、どうせなら大阪へ行こう」

「いいけど、何で?」

「本場のたこ焼きを一度味わってみたかってん」


ゴッツーン・・

全く緊張感のない五郎に、空は正義の鉄槌を食らわした。
しかもなぜ関西弁。



「こんな時に何ふざけてんだよ!大体テメェが、」

ドンドンドンッ



空が五郎にきついお叱りをしているさなか、突如玄関の戸が激しく叩かれた。

こうして無遠慮に訪問してくるのは、泥酔した酔っ払いのサラリーマンか借金取りしかいない。

今のところ後者が有力だが。



空はゴクリと喉を鳴らす。



「鷲尾!いるのはわかってんだ!さっさと開けろ!」


やはり。
遅かったか、と空は溜め息を吐き出した。





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あきゅろす。
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