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「知らねー奴に売られるくらいなら、俺はここを出て行く」

未だにちゃぶ台の傷を入念に確認しているアホな五郎に、遂に空は決心を告げた。


目を剥く五郎。
ちゃぶ台の脚に傷を見つけたのだ。



「本気で出て行くぞ!」

止めて欲しい空はもう一度大きい声で言ってみた。

しかし五郎はちゃぶ台についた傷に夢中で全く聞いていない。



「………」

妙な沈黙が続くこと数分。

痺れを切らした空はチッ、と渋い顔で舌打ちをうつと不貞腐れたようにドカリと畳に腰をおろした。


「なんだ、出て行かないのか」


とぼけているようでしっかりと聞いていた五郎はチラリと空に一瞥を寄越して腰を据える空に訪ねる。


「なんで俺を売った…それでも親かよ」


呟くように声をもらす。

空はショックだったのだ。
実の親に金と引き換えに売られたことが。

当然であろう。
父の五郎とは喧嘩ばかりの生活ではあったが空は生まれてこの方、自分を不憫に思ったり父を恨んだりしたことはなかった。

何だかんだで親思いの空。

なのに…父はそりゃあもうアッサリと自分を売った。

怒りを通り越し、最早呆れるしかない。



項垂れ途方に暮れている空に五郎はフッと息を吐くとポンッ、と空の肩に手を置いた。

顔をあげた空の目に映ったのは、頼もしげな父の(超貴重な)笑顔と立てた親指。


何か打開策でもあるのか?と空の脳裏に微かな光が見えた瞬間




「強く生きろよ、息子よ」

「………」



やはりただの阿呆だ、と空は改めて思った。




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