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焦ったように空の手からプリントを奪い取った三貴は、か細い声で言った。

「僕には関係ない…どうせお父様は…仕事だろうし…」

唇を噛みしめ俯く三貴に、空は身を屈めて目線を合わすと

「一也さんには言ってみたのか?」

空の問いに、三貴は首を振った。
言ってみてどうなるものでもない。三貴は小六にして父が忙しい身であることは十分理解していたし、わざわざ自分の授業参観なんかで父を煩わせるつもりもなかった。

けれど…毎年毎年、クラスメイト達の親を見る度に、なぜか一也の姿を探してしまう自分が悲しかった。

「三貴」

プリントがグシャグシャになるくらい手を強く握り何かに耐える三貴に、空は微笑みかける。

「喜べ。俺が一也さんの代わりに行ってやる」

「え…」

「今日、お前の保護者は俺だ」

空の申し出に、三貴は顔を綻ばせた。

「うんっ!」

実際、父親が来てくれるわけではないけれど知っている誰かが見に来てくれる、それだけで嬉しかった。

三貴は心を躍らせながら、意気揚々と学校へと向かったのだった。





三貴を見送ったあと、リビングに戻るとサンドイッチを食べながらテレビをぼんやりと見詰める遊二がおりてきていた。

「遊二、お前学校はいいのか?」

「空っちそれ禁句ー。今遊二はね、停学中なんだよ」

「十夜、余計なこと言うんじゃねぇよ」

「はいはい」

「停学?」

空は首を傾げる。

すると、近づいてきた十夜にこっそり耳打ちされた。

「教師殴って停学中なの。明日とけるみたいだけど」

「なんだ。俺はてっきり強盗か強姦かと…」

「いや、それ犯罪だから。人間として駄目でしょ」




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