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5



遊二はファイティングポーズをしかけたまま愕然としていた。

脳をフルにつかって空の思惑を考えてみるが、全く答えが見つからない。
頭上に乗せられた手を振り払うことも出来ず、聖母の如く微笑む空をただ見詰めた。


ひとしきり遊二の頭を撫で撫でした空は、そっと手をおろすと膝を折りベッドに座る遊二と目線を同じにすると口を開いた。



「大丈夫だ、朝メシにピーマンは入れてない」

「……」


遊二はパチパチと瞬きを繰り返した。
奇妙なモノでも見るような目を空に向けている。


(こいつ何言ってんだ…)


まるで駄々をこねている子供をあやすかのような扱いに、遊二は先程自分が発した言葉を思い返してみた。

『俺がいつ起きようが、テメェには関係ねーだろ』


そう、たったこれだけしか言っていない。

なのにどうして、と遊二は空のぶっ飛んだ思考に頭を悩ませるのであった。


遊二を思考の迷路へと迷いこませた張本人である空は、容姿の印象だけで遊二がピーマン嫌いと決めつけているためこう解釈していた。


『朝メシにピーマン入ってたら起きねーもんね!』

(全く我が儘な奴だ…ここは専属使用人として優しく諭してやらねば)


というように、今に至ったというわけだ。


「さぁ、わかったらさっさとおりてこいよな」

にこやかに親指を立ててウインクまで寄越してきた空に、遊二は呆然としたままその背中を見送ったのだった。




空がリビングに戻ると、既に制服を着込んだ十夜がサンドイッチをのんびりと食していた。
あのあと、ちゃんと起きてきたようだ。


「九音は?」

「もう学校行ったよ。生徒会の仕事が溜まってるとかぼやきながら」

「ふーん」

九音が手をつけずに残したサンドイッチに目を落としながら、空は「学校か…」と呟いた。

もし普通の家庭に生まれていたのなら、今頃自分も学生生活を謳歌していただろうに…とサンドイッチをつつきながらやさぐれていると

「そういえば空っちっていくつ?」

「いきなり年齢を聞くなんて失礼だぞ」

「何年増女みたいなこと言ってんのさ。教えてよ」

「……20」

空は咄嗟に嘘をついてみた。
本当は15才で学校に通っていれば中三であるが、年上イコール敬われると思った空は嘘をついたのだ。
それを聞いた十夜は「えー!」と驚きの声をあげる。

「俺と同じくらいかと思ったよ!マジ!?」

思ってたよりもいいリアクションをくれた十夜に、空はにんまりと笑った。

「あぁ、だから尊敬しろ。」

「いや、空っち使用人でしょーが」

「………」

それもそうか、と空はすんなり納得した。
年上なのに年下にコキ遣われるというのはそれはそれで嫌だ。
そう考えに至った空は咳払いをすると


「本当はお前とタメだ」

「…どうしてそういうくだらない嘘つくかなぁ」

十夜は呆れたように溜め息を吐いた。驚き損だ。



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あきゅろす。
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