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訳がわからず眉間を寄せる空に、妖艶な笑みを浮かべた十夜はスルリと空の脇腹に手を差し込んだ。
「んなっ、」
ひんやりとした手で素肌を撫でられた空はビクンッと背中を仰け反る。
その反応にますます気をよくした十夜は顔を近付け空の耳許にフゥと吐息を吹き掛けた。
「あっ」
自分のだしたこともない声に驚く空。
目を見開き十夜を見据えると、楽しそうにニタついている顔がそこにはあった。
その間にも十夜の手は空の肌を巧みな手つきで愛撫してくる。
声がでそうになる度グッと唇を噛み締める空に、十夜は甘い声で囁く。
「声、だしていいんだよ?」
ふざけんな、と怒鳴りたくても体に力が入らない空は声を我慢するのに精一杯だった。
体が熱く火照り、口から漏れるのは荒い息遣い。
一体何なんだこの展開は。外からは雀の囀ずりが聞こえてくる清々しい朝だというのに。この一室だけ卑猥な空気がムンムンと漂っている。
破廉恥な奴らめ。
十夜はちょっとした悪戯のつもりで始めたつもりだったが、予想外な空の可愛い反応に本気で興奮してきていた。
(あぁ、凄く縛ってみたい…泣かせてグチャグチャにして――)
鬼畜心をもろに刺激されてしまったらしい。
「空っち、俺もう我慢できないや〜。食べてちゃっていいかなぁ?」
既に十夜は臨戦体勢だ。
しかし、熱に浮かされたように潤んでいた空の瞳がその言葉を皮切りにガラリと色を変えた。
「わかった。退け」
「え…本当にいいの!?」
まさかお許しがでるとは。多少、というかかなり抵抗されるかと思っていた十夜は驚き、そして空はこう見えてかなり場数を踏んでる淫乱だと思うことで納得したのだった。
(下の世話までしてくれる使用人なんて最高!)
浮かれまくっている十夜はこれから出来るお楽しみにウキウキと空を抱き込んでいた腕の力を緩めた。
「ん?」
が、体を起き上がらせた空はスタスタとドアの方へ向かってしまう。
ズボンを膝辺りまで脱ぎかけていた十夜の手が止まる。
「空っち?」
出て行く寸前、背中に声をかけると振り向いた空は呆れた顔で言った。
「朝メシならもう出来てるから降りて来い。ここんちはどいつもこいつも食いしん坊だな」
十夜の言葉を、空はこう解釈していた。
“我慢できないほど腹ペコだから早くご飯が食べたいな♪”
「……」
パタリと閉められたドアを見つめながら、十夜は中途半端に脱ぎかけていたズボンをきっちりと履いた。
下半身に集まっていた熱は、いつの間にか冷めきっていた。
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