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◇
翌日の早朝。
空は箒片手に離れの回りを掃除していた。
アホだが与えられた仕事は完璧にこなす性格は、小さい頃から様々なバイトを経験していくうちに身についたものである。
空はふぅ、と息をついてカラリと晴れた青空を見上げた。
(クソ親父、今頃何してんだろ…ちゃんと飯食ってるかなぁ)
借金大魔王にして唯一の肉親である五郎に思いを馳せる。
空なしでは何も出来ない五郎を重々承知している空は、今頃五郎がのたれ死んでいないかと心配していた。
昨日の段階では鴉間家の本邸にいたはずだが、自分が来た今人質としての役目も用済み。
住む場所も暮らす金さえも働く能力さえもない駄目人間五郎が生きていくには辛すぎる世の中である。
しかし空は一億で売られた身。
ここを飛び出すことさえ叶わない。
空は深く深く溜め息をついた。
「まぁ、あれはあれで中々しぶといからな。そう簡単には死なねーだろ」
そう自己簡潔して再び仕事に勤しむ空であった。
掃除を終え、空が離れの中に戻るとリビングでは優雅にコーヒーを飲みながら新聞を読む九音の姿と、少し離れた場所で体育座りをした三貴がテレビを見ていた。
空はそれを確認してキッチンへ行くと、既に下準備をしてあった朝食を盛り付け二人の元へ運んだ。
態度さえ改めれば実に優秀な使用人と言えるだろう。
皿を九音の前に置くと、それに気付いた九音は新聞を折り畳み空を見上げ「これは?」と問うた。
「朝メシだ」
皿に乗せられているのは様々な種類のサンドイッチ。見た目も鮮やかだ。
「俺は朝、食べない主義だ」
「そんなん知るか。食いたくなきゃ食うな」
「……」
九音の性格からしていつもなら言い返すところではあるが、空という人物の力量が未知数な今、余計な争い事はせず暫く様子を見ることにしたのだった。
(だがあのとぼけた顔に口の悪さ…腹が立って仕方がない)
少しずつ傷つけられていくプライドに、九音は平静を装いながらグッと耐えた。
早起きして作った朝メシをパスされ少々不機嫌気味な空はもう一つの皿を片手に三貴の元へ向かった。
三貴はまだ眠いのか頭をカクンカクンと揺らしている。
「朝メシだ」
「………はい……」
寝惚けた様子で返事をする三貴に、空は少し考えたあとサンドイッチを一つ掴み三貴の手に持たせてやった。すると、三貴は目を瞑ったままそれを口元へ持って行き食べ始めた。
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