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ワイルドな男らしさ漂う美形を前に『ピーマン食えなさそうな顔』という一言で容姿を証された遊二は茫然とした。

いつも何もせずとも女の子が寄ってきていた為、自分の容姿はそれなりにいいのだと自覚があった遊二。
なのにどうだろう。
目の前のアホ面の男は、平然とそう言いきったのである。

あまりのショックに固まる遊二に、空は「あ、」と思い出したかのように言葉を付け加えた。

「飯出来たからさっさとおりてこい」
「……」

偉そうな物言いにも言い返せないでいる遊二はスタスタと去って行く空の後ろ姿を見詰めながら頭を抱えた。

(ピーマン食えなさそうな顔ってどんな顔なんだ!血色が悪いってことか!?腐ったピーマンみたいな顔してるってことか!?)

あいつにその真意を聞きたい。けれど聞いたらなんか負けなような気がする……遊二はそんな複雑な思いを抱えながら美味しそうな匂いに誘われるようにリビングへと向かったのだった。






リビングには既に全員が勢揃いしていた。

こうして鴉間家の兄弟が食卓を囲むことはとても珍しい。
と言うのも、空の前任である使用人たちは兄弟たちのあまりに“個性的”な性格についていけずすぐに辞めてしまうことが多く、こうして団欒の場を作ってやることも出来なかったのだ。

それを無意識にやってのけてしまった空。

そして無意識に集まってしまった兄弟たち。



「よし全員揃ったな。あ、おい、遊二!まだ食べんじゃねーよ!皆でいただきますだろぉがぁああ」

今日突然やってきたにも関わらず、お誕生日席を陣取り仕切る空。

巻き舌気味に注意された遊二は眉をしかめながらも舌打ちをして大人しくスプーンを置く。


「それじゃあ、いただき――」
「ちょっと待った」


待ったをかけたのは長男九音。

邪魔された空は不機嫌さを滲ませた顔で九音に視線を向けた。


「んだよ、食いしん坊メガネ」

「き、貴様っその呼び方やめろ!一体何様のつもりだオマエ。使用人の分際で!それが主人に対する態度か!」

厳しい口調はまさに人の上に立つ者の威厳が滲む。

普通の人間であれば怯んでしまうだろう。

しかし空は全く動じなかった。

何しろ、アホの子だからだ。



「俺の雇い主はテメェの父親であってテメェじゃねぇ」

アホなくせに最もなことを言う空にグッ、と言葉を詰まらせる九音。

空は「くだらないこと言ってんじゃねぇ」と吐き捨てると、改めて手を合わせた。

「いただきます」

「「いただきます」」

空の掛け声につられるように手を合わせた他の兄弟たち。

育ち盛りである彼らは、これ以上おあずけを食らうのは御免だとばかりに空に対する様々な不満を後回しにすることにしたのだった。




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