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「おい、食いしん坊メガネは?」

空は姿が見えない長男の行方を十夜に訪ねた。

どうやら九音は食いしん坊メガネで定着してしまったらしい。
己が一番食い意地はってるというのに…。


「えっと…それってもしかして九音のことかな?」

「確かそんな名前だったな」

「九音なら自室にいると思うよ、たぶん遊二も」

「遊二?」

「あれ?空っち会ってないの?」

コクリと頷く空。

それもそのはず。
実際会ってはいるが、空は寝ていたため全く記憶にはない。

しかし、なぜだか遊二と聞いた瞬間強打した額の痛みがズキズキと甦ったのだった。


「俺呼んでくる」

「わかった。遊二は狂犬並みに狂暴だから気をつけてね」

弟に狂犬呼ばわりされる遊二、哀れ。







二階への階段を上がった空だったが、どこが誰の部屋だかさっぱりわからなかったため取り敢えず手近なドアから手当たり次第開けて行った。

ガチャ、バタン、ガチャ、バタン、ガチャ、バタン、ガチャ・・・


「あ」

ある部屋で一人の人間を見つけた空。
見つけられてしまった人間はノックもせずにいきなり入ってきたデリカシーの欠片もない空に眉をしかめた。

「まだいたのか、貴様」

「当たり前だろ。テメェの望み通り作ってやったから早くおりてこい」
バタン・・

空はそれだけ言うと九音の部屋から出て行った。


(何だ今のは…)

残された九音の頭には疑問符が浮かんだ。






九音の部屋をあとにした空は、遊二を探していたが今度は部屋を開けていくこともなく目的の人物とは廊下でばったり出会した。


「オマエは…」

「遊二ってテメェか?」

「そうだ。テメェ、何者だ?人んちのリビングでグースカ寝やがって」


不良ならではの凄みのある睨みが空に向けられる。

しかし、空は一切動揺を見せない。

幼い頃から強面の借金取りばかり見ていたせいか免疫がついているのだ。


(こいつ…この俺に対して全く怯んでねぇ。できるな…)

十夜同様、空を買い被っている遊二に無表情のまま近付いて行く空。

反射的に身構える遊二。

そして――



「オマエ、ピーマン食えなさそうな顔だな」

「……は?」




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