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凄いだろ?と少々自慢気に事の成り行きを話した五郎に、空はついに頑固オヤジの如くちゃぶ台をひっくり返した。

ガッターンッ・・・

「……」

しかしそれにも全く動じない五郎。


実に落ち着いた様子で唯一の家具であるちゃぶ台が壊れてしまっていないか確認までしている余裕ぶり。


いくつもの修羅場を乗り越えてきたこの男は、強靭な精神力を兼ね備えていた。

主にそれは借金取りから逃げているうちに身に付いたものだが。




「ふざけんじゃねーよ!何で俺が親父の借金のカタにされなきゃなんねーんだよ!」

鼻息荒く五郎の胸ぐらを掴む空。


彼の言うことは最もである。


何しろ、父親が作った借金のせいで中学も中退し小さい頃から新聞配達などのバイトをして家計を支えてきたのは、この空なのだ。


五郎は運のなさ意外にも、根本的な問題を抱えていた。




アホなのだ。


定職に就いても長続きせず、給料が入る前にクビなんてこともザラ。

空が一生懸命働いても、借金は膨れていくばかり。


しかしかくいう空も、五郎の血を受け継いでいるせいか、お人好しなお陰でこんな駄目親父を見捨てることなど出来ずにいた。





「空、俺のことは心配するな。一人でも元気にやっていく」

「誰もテメェのことなんざ心配してねぇよ!」


空は的外れなことを言う五郎の胸ぐらをグラグラと揺すり声を荒げた。


今まで散々頑張ってきたのにこの仕打ちはなんだ、と空は泣きたくなった。

しかし駄目親父の元に産まれてきたのが不幸中の不幸。


この運命から逃れることは出来ないのである。




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あきゅろす。
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