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暫くオロオロしていた三貴だったが、意を決したように包丁を握る手に力をこめると玉ねぎに向けて“思いきり”降り下ろした。

ゴトンッと物騒な音と共に、見事真っ二つに割れた玉ねぎに三貴はホッと胸を撫で下ろす。


一仕事終えたような達成感が三貴の中に広がった。

が、


「おい三貴、何思いきり切ってんだよ。危ねーなぁ。もういいからあっちで待ってろ」

「………」


(思いきり切れって言ったくせに…)


危なっかしい三貴の包丁捌きに見かねた空が声をかけると、三貴は瞳を潤ませ足早にキッチンから出て行ってしまった。


そんな三貴の様子に全く自分のせいだとは思いもしていない空は首を傾げ、


「反抗期かよ、うぜぇ」

と、吐き捨てたのだった。最悪だ。







あっという間に野菜たっぷりなカレーを完成させた空は、人数分(ちゃっかり自分のも)よそうとリビングへと運んだ。

リビングには十夜と三貴が真剣な表情で今話題のドラマを食い入るように見ていた。

『加奈子くん、僕はいけない教師だ…生徒である君を愛してしまうなんて…でも、もう止められない』
『先生、駄目っ』
『加奈子くんっ!』
『あっ…』

テレビの中ではセーラー服を着た女子高生である美少女アイドルと、教師役のトレンディ俳優が日暮れの誰もいない教室でキスをしているという山場のシーンに差し掛かっていた。

そんな俗にいう“いいところ”で

「飯出来たぞ〜」

空の間抜けな声が二人に掛けられた。

「もう、空っち今いいとこなんだから空気読んでよね!」

十夜が頬を膨らましKYの塊とも言える空に向かって抗議する。

「あ?十夜テメェ、飯抜きにすっぞ。くだらねードラマなんか見てんじゃねーよ!」

空気が読めない奴だと本当のことを指摘されてしまった空は腹を立てた。

乱暴にテーブルの上に皿を並べていく様子に本当に飯抜きにされかねないと感じた十夜は冷や汗を流し即座にテレビを消した。

「すいません、食べさせてください」

素直に従った十夜に、空は「わかればよろしい」と満足げに頷いた。

もう一度改めていうが空は主人に仕えるべき使用人という立場である。



二人の会話を聞いていた三貴はドラマの続きがとても気になったが、飯抜きは困ると思いそそくさと席に着いていた。




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