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あの細身な体のどこにあんなパワーがあるのだろうかと空は感慨深げに周の後ろ姿を見送ったあと、離れの扉を開けた。


ガチャ・・
「失礼しまーす…」


中は閑散としており、人の気配はない。

本邸のような派手な内装を想像していた空だったが、中はわりとシンプルな造りになっていた。


誰もいないため勝手に上がり込んだ空は、手近な部屋のドアを開く。

すると、出たのはリビングのような広い場所。

ガラス張りの天井から射し込む日差しが何とも幻想的だ。


「……」

空はあまりにも素敵な光景に、ムズムズと体が疼いた。
窓際に置かれたリクライニングソファーが自分を呼んでるような気さえしてきた。

どうにも我慢できず、空は一直線にリクライニングソファーに飛び込んだ。
バフンッと柔らかなスプリングが空の体を包み込む。

「…金持ちになった気分だ」

思わず笑みがこぼれる。




空がセレブ気分に陥っている間、ここに住む住む鴉間家子息の説明をしておこう。

高二の長男である九音(クオン)は成績優秀な優等生。現在高校では生徒会長を務め生徒や教師らも全幅の信頼をよせている。

高一の次男である遊二(ユウジ)は九音とは反対に手のつけられない不良。暴力事件で現在停学中。

中三の三男である十夜(トウヤ)は女ったらしの遊び人。しょっちゅう女絡みで揉め事を起こしている。

小六の四男である三貴(ミツキ)は引っ込み思案で大人しい性格のためか自分に自信が持てずにいる。



という内容を一也から事前に聞いている空だったが、全く興味などないため既に頭から抜け落ちていた。

今はこんな豪邸に住み込みで働ける感動のほうが大きい。何せ食事付きだ(かなり重要)。


もうお気付きかと思うがアホ五郎の血を受け継いだ空も相当なアホである。


「眠くなってきたなぁ…」

リクライニングを限界まで倒して緩んだ顔のままウトウトと微睡んできた空。

そんな空の耳にガチャリと物音が聞こえたが、起き上がることさえ億劫な空は眠気に逆らうことなく身を委ねた。








「誰だコイツ…」

帰って来たのは街へ遊びに出掛けていた停学中の遊二。

我が物顔でソファーの上で猫のように丸まり眠っている見知らぬ人物を発見し目を見開いた。




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あきゅろす。
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