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ある程度の説明をされたあと一也の部屋を出た空は、周の案内で敷地内にある離れへと向かっていた。


先程までいた場所は本邸らしく、空がこれから世話をする一也の息子達は全員、なぜか離れで暮らしているらしい。


ということで、またも暴走自転車、通称阿魔音号に乗る羽目になってしまった空。



「うわぁぁ!周さん早すぎだからぁああ」

「そうですか?かなりゆっくり走ってるつもりなんですけど…。あ、空さんもマイチャリを持っておいたほうがよろしいですよ?ここ広いですから〜」


鴉間家の広大な敷地を飛び回らなければならない使用人頭である周は、移動手段としてこうして毎日自転車を使用している。

しかし移動手段など今はどうでもいい空は気が遠くなる思いに耐えていた。

周は顔色一つ変えず涼しい顔でペダルを漕いで行くが後ろに乗る空は白目を剥きながら辛うじて周の腰を掴んでいるといった状態だった。






「着きました。こちらです」

「…死ぬかと思った。てか絶対途中死んでた」


時間にすればおよそ数分であったが空にしてみれば地獄のような時間がやっと終わった瞬間だった。



たどり着いた鴉間家の離れは本邸と比べるとやはり小ぶりな建物ではあったが、男数人が暮らすにしたらやたらと広く…

(掃除すんの大変そうだなぁ…)

周が言うにはここには訳あって使用人は一人もいないらしく、全ての仕事(家事)を空一人でこなさなければならないとのこと。



「じゃあ、わたくしは仕事が残ってますのでここで失礼します。離れでの仕事に関しては空さんに一任するとご主人様からお達しがでておりますので」

頑張ってくださいね、と満面の笑みで自転車に再度跨がった周は、

「え、ちょっと待っ」

空の静止の声も無視して猛スピードで去って行ってしまった。

あっという間に見えなくなってしまった周の姿に、空は二度もあれに耐えた自分を称賛に値すると思った。



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