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路地裏を曲がった瞬間、俺の目の前に壁のような影が出来る。


「………」


近道としていつも利用している細い路地。

人と出会すことなんて今までなくて。


俯きがちに歩いていた俺の目に最初に飛び込んできたのは、薄汚れたスニーカー。

あ、これ限定モデルの俺が欲しかったやつだ!


限定100足として売り出された大手メーカーのスニーカーは、オークションでも手に入れることが難しい代物だった。


それを薄汚れているにしても持っている幸運な人物の顔を拝もうと、視線をあげた瞬間、俺は機械仕掛けの人形のようにカチーンと固まった。



なぜかって?


それはね、目の前の男が血まみれだからですよーー!!

何、何なのこの人!ま、まさか殺人犯とか!?

俺ヤバくね?殺され――

「おい、」

「ヒィーーッ!!!殺さないでぇぇぇぇ!!!」


路地に響く俺の絶叫。

長身の血まみれ男は眉をしかめて俺を睨みあげた。


怖えー怖えーよ、母ちゃーーーんっ!


ガタガタと足が震えて逃げることも出来ない史上最高にチキンな自分が恨めしい。

あまりの恐怖に俺は目をギュッと瞑り、祈るように手を組んだ。




「………」

しかし待てど何も起こらない。


その変わり聞こえたのは、ドサッと何かが崩れたような音だった。


おかしいな、と思い薄目を開けてみると―――血まみれ男はなぜか視界から消えていた。



「た、助かった……?」


生きてたことにホッと胸を撫でおろし、こんな物騒なところから早く立ち去ろうと足を踏み出す。


プニッ


「ん?」




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