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「東雲くん、僕はもの凄く君を抱き締めたい衝動に駆られてしまった。」
「は?――っ、」
顔をあげるといつの間にか伊集院が目と鼻の先にいて、訳がわからないまま抱き締められた。
えっと…
これは…
予想外だ。
動転しすぎて突き放すことも出来ず、なぜかドクンドクンとはち切れそうなほどに五月蝿い心臓のせいで声に詰まった。
「…い、伊集院」
やっと口から漏れたのは、何とも情けない声。
触れ合ってる部分が、熱かった。
「………すまない」
伊集院は小さくそう洩らすと、あっさり抱擁を解いた。
視線をあげると、いつも通りの笑顔。
だけど、激しく鼓動する心臓はおさまらなかった。
「では早速、三階の男子トイレに行ってみようではないか!」
「う、うん…」
トイレの太郎くんの出没スポットに向け歩き出した伊集院。
僕は未だに火照る顔を見られまいと、彼の少し後ろを歩いた。
伊集院の言葉が、伊集院の行動が、名前の知らない初めての感情を、僕の中に落としていく。
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