2 強制的に連れられてやってきた伊集院邸。 敷地面積いくつだよ、ってくらいそれはそれは、立派なお宅で。 伊集院が筋金入りのお坊ちゃまであることを知った瞬間だ。 しゃべり方からして何となく普通じゃないとは思っていたけども。 「お帰りなさいませ坊っちゃま。」 門をくぐり庭園を進み玄関の扉を開けると、そこには執事らしき年配の男性の姿があった。 やっぱり坊っちゃまなんだ。 「ただいま、爺。今日は僕の友人を連れて来たのだ!」 そう言って伊集院は僕の肩を引き寄せた。 友人?いつの間に? 僕は困惑しながらも、高校に入って初めてできた“友達”というものに少なからず心が躍った。 「初めまして、東雲七緒です」 ペコリと頭を下げると、お爺さんは顔に深い皺を刻んでニコリと微笑んだ。 「執事の水木です。坊っちゃまがご友人をお連れになるなんて初めてでございますね」 「っ、爺!余計なことはいい!あとで部屋に茶を頼む」 伊集院は慌てて水木さんにそう告げると「着いてきたまえ」と言って屋敷の奥へと進んで行った。 …耳が赤くなってるのは触れないでおこう。 言われた通り後に続くと、伊集院の部屋らしき場所に通された。 広くて高級そうな家具が並んでいて、ベッドなんて大人三人くらいが寝れそうなほど大きい。 僕の部屋とは大違いだ。 「さぁ、寛ぎたまえ」 「う、うん…」 庶民がこんなとこでいきなり寛げるわけがない。 だけど伊集院に気を遣わせては悪いのでソファーに座り“寛いでる風”を装うことにした。 フゥ、とわざとらしく息を吐いたりして。 それを確認した伊集院が向かいに腰かける。 強引さに負けてつい足を運んでしまったけれど、学園のアイドルとの急な展開に頭がついていかない。 「あのさ、何で伊集院は……その、僕をなんで部に誘ったの?」 クラスでも人気者な伊集院、片やクラスでも目立たず暗くて地味な僕。 ただただ謎だった。 . [*←][→#] [戻る] |