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「東雲くん、突っ立ってないでこっちに来て座ったらどうだい」
「あ、うん…」
僕は伊集院が横たわるベッドの近くにあった椅子に腰掛けた。
距離が近くなったことで、僅かに感じる緊張感。
なるべく普通にしなきゃと思うのに、何を話したらいいのか、彼とどう目を合わせたらいいのかわからなくて…
僕の目線は自分の膝に向けられたまま、動かせずにいた。
「昨日…」
伊集院がふと呟いた言葉に、間近で見た彼の顔が浮かぶ。
「昨日みたいに、東雲くんの手料理がまた食べてみたい…」
掠れ気味な声で、伊集院が言う。
僕はゆっくり視線をあげ、彼を見据えた。
熱で上気した顔が、僕を優しげな瞳で見つめていた。
「うん、いつでもおいで」
伊集院は嬉しそうな笑顔で頷く。
僕はそれだけで、ここに来た甲斐があったと思った――。
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