風邪
翌日――。
ろくに一睡も出来ずに僕は登校した。
睡眠がままならなかったのも、そもそも昨日の出来事のせい…
伊集院とキ、キスを…してしまったからだ。
思い出しただけでも顔が発火したように熱くなる。
――ガラッ
「おら席つけー」
伊集院とどんな顔して会えばいいのか、そんなことを考えている間に担任の先生が教室にやって来た。
隣に伊集院の姿はない。
遅刻か?珍しい…今まで無遅刻無欠席だったのに。
そんな僕と同じことを思った伊集院ファン(女子)が先生の言葉を遮るようにして問い詰めた。
「先生ー伊集院くんどうかしたんですかぁ?」
「あー、伊集院は風邪で休むそうだ。」
えー、とクラス中から落胆の声がもれる。
どんだけ人気なんだ。
「それで、今日は色々と配布物が多いから誰か帰りに伊集院んちに届けてくれんか?」
先生の頼みに、女子達が一気に色めきだつ。
「先生!私が行きます!」
「いいえ、私が行きます!」
「あんた達ズルい!抜け駆けはなしって言ったでしょ!?」
「わかったわ!じゃあ皆で行きましょうよ!」
教室内は一瞬、一触即発の雰囲気に包まれたが一人の女子の提案によって落ち着きを取り戻したようだった。
「あのなぁ、お前ら。そんな大勢で行ったら伊集院だって迷惑だろ。届けには伊集院んちを知ってる奴に行ってもらいたいんだが…誰かいるかー?」
先生の問いかけに、手を挙げる者はいない。
そういえば…前に水木さん(伊集院んちの執事)が、家に連れてきた友人は僕が初めてだって言ってたっけ。
……ハァ。
顔を合わすのはとても気まずいが、僕は仕方なく手を挙げた。
「お、じゃあ東雲よろしくな」
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