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「見て、たんだ…」
「あぁ、何だかすごく嫌な気持ちだったよ。どうやら僕は、相当嫉妬深いらしいな」
はははっと軽く笑う伊集院。
どうしよう…
引き受けたからには渡さなきゃいけない。
でも、渡したくない。
矛盾する気持ち。
その時、彼女の不安そうな顔が、頭をよぎった。
僕は意を決して鞄から手紙を取り出した。
「これ…伊集院に渡してほしいって、頼まれたんだ。」
中身を見たわけじゃないし、これがラブレターだとは限らないじゃないか。
もしかしたら果たし状、いや、それはないか。
そう自分に言い聞かせて、なるべく平常心を装って伊集院に差し出した。
だけど、伊集院は手紙を開くことなく静かに言った。
「君は、残酷だね」
「っ……」
刃物で刺されたかのような痛みが胸を襲う。
僕は伊集院を、傷つけた。
けど彼の表情はいつもと変わらずで、その優しげな笑みが更に罪悪感を煽る。
僕の行動はとても無神経で、軽率だ。
好きだって言われたのに…
心の中で、傷つけるってわかっていたのに…
「なんで君が、泣きそうな顔をするんだい?」
「だって…」
だって、苦しいんだ。
伊集院の優しさが。
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