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「どうかした?」
カップを手に部屋へ戻ると、伊集院はソワソワと所在なさげに辺りを見渡していた。
「いや…東雲くんの匂いが充満していて、何だか変な気分になってくるのだよ」
そんな頬を染めて変態発言されても…。
とりあえず軽くスルーして「ご飯作ってくるね」と言って僕は部屋をすぐに出た。
――――
「美味しい…」
「良かったぁ。口に合ったみたいで」
待たせるのも悪いと思って手早く出来る簡単なものになってしまったけれど、伊集院は出したもの全てを完食してくれた。
「初めて食べるものばかりだったが、実に美味しかったよ」
「そう言ってくれると作った甲斐があるよ」
伊集院があまりに誉めるもんだから、お世辞にしても何だか嬉しいやら恥ずかしいやらで思わず笑ってしまう。
僕は一人っ子で両親も帰りが遅かったりするから、一緒に食べてくれる人がいるっていうのは、楽しい。
しかし、温かい気持ちに浸っていられたのもここまでだった。
「そう言えば東雲くん、今日女子に呼び出されていたね?」
ドキッと心臓が跳ねる。
楽しかった気持ちが、一気に降下していく。
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