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授業が終わり休み時間。
伊集院は早速クラスメイト達から囲まれ、何やら楽しげな会話が隣から聞こえてきた。
僕は特に喋る友達もいないので、本でも読もうかと思っていた矢先
「おい東雲ーお呼びだぞー」
呼ばれた声に顔をあげると、教室の入り口付近にいた川越くんが、隣の人物を指さしていた。
他のクラスの女子だ。
長い黒髪をした、大人しそうな子だった。
僕に何の用だろ?見たところ、面識はないはずなんだけど…。
「何?」
傍まで行って用件聞くと、彼女は睫毛を震わせ思いきったように口を開いた。
「あ、あの!東雲くんて、伊集院くんと仲いいって聞いて…それで…この手紙、伊集院くんに渡してもらえないかな?」
差し出されたのは花柄がプリントされた、可愛らしい手紙。
「……」
いくら恋愛に疎い僕だからって、これが何かってことくらいすぐにわかった。
「お願い、できるかな?」
すぐに返事をしなかったせいか、名前も知らない彼女は不安そうな瞳で見つめてきた。
普通なら、自分で渡したほうがいいよ、って言うべきなんだろうけど…
「わ、わかった…渡しておくよ」
断ることが、出来なかった。
彼女があまりに必死な顔をしていたからなのか、不安な気持ちがどこか僕とリンクしているような気がしたからなのか…
「ほんと!?ありがとう」
彼女は安心したように表情を緩めると、自分のクラスへと帰って行った。
僕の手に、重くのし掛かる手紙を残して――。
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