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はじまりのおはなし(続2
そして…ついに忌まわしい祭りの夜がやって来たんじゃ


生贄を召し取る合図の矢が天を貫き、
ある家の屋根に突き立てられる
それは、イザナミという神木村一美しい娘の家じゃった
イザナミに密かな想いを寄せていた剣士イザナギはこれに怒り、
今年こそオロチを退治すると決心を固めて、
イザナミの身代わりとなってオロチの棲む祠へと向こうたのじゃ



冥府へ続くかのような暗闇を湛えた、オロチの根城「十六夜の祠」
イザナギがその洞窟に立つと、
目を真っ赤に光らせた八本の首が、舌なめずりをしながら現れた
イザナギは弾かれたように飛び出し、オロチに切り掛かった
月明かりも乏しい中、必死で剣を繰り出すイザナギ
……しかし、鋼のようなオロチの体には、傷一つ付ける事が出来ない
やがてイザナギは万策尽き、がっくりと膝をついてしまったのじゃ


絶対絶命のその時じゃ
一匹の獣がイザナギを庇うように踊り出て
オロチの前に立ちはだかった
闇の中で薄っすら光を帯びた白い体
それは神木村の外れに住み着いていたあの白野威じゃ
白野威が牙を剥いて飛び掛かると、
オロチも八本の首をもたげて喰らい付く
二匹の人ならぬ物はもつれ合うように猛然と争い始めた
じゃが、その戦いは何とも不思議な光景じゃった
オロチが白野威に向って火を吐くと…突風が吹いてこれを押し返し、
オロチの鋭い牙が白野威に迫ると…突然大木が生えてこれを遮った
不思議な力に守られて、オロチと互角に戦う白野威


じゃが……それでもオロチの力には敵わない
白野威は全身に傷を負い、白い毛並みは真っ赤に染まっていった
白野威は疲れ果て、もはや立っているのがやっとじゃった
オロチの牙がふらつく白野威を追い詰める
それでも白野威はオロチに背を向けず、
最後の力を振り絞り天に向って遠吠えをした
すると……空を覆っていた暗雲が忽ち消え失せ、
月明かりを浴びたイザナギの剣が、金色の光に輝き始めたのじゃ

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