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story
霜弥様より相互小説
◆始まりの紅

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騎士になったのは単純な憧れだったのかもしれない。
騎士に対する…というよりも、ある特定の人物に対する。

彼との出会いは本当に信じられないくらいに運命的だった。
幼い頃両親を亡くした私達は下町の住人達に見守られながら恙無く日々を過ごしていた。生活は決して楽ではなかったが、不満もなかった。
弟のレイヴンは騎士になって私の生活を楽にしてやる、と豪語しているが期待はしていない。弟の性格からすると例え騎士になれたとしてもすぐにクビになるかいつまでも下っ端で燻っているかのいずれかだろう。私は騎士になど興味はなかった。むしろ、どちらかと言えば嫌いだった。
……あの時までは。





あの日、私はいつものように市場へ買い物に出掛けていた。
いつもの買い物カゴを手に、いつもと同じ道をいつもと同じように歩く。ただ一つだけ違うのはその道すがら、騎士に出くわしてしまったこと。
私の目の前に数名の男性騎士が立ち塞がった。明らかに私の行く先を妨害しようとしている。

「俺達にちょっと付き合ってくれねえかな?」

騎士の一人がニヤニヤと笑いながら私に話し掛ける。私はそいつを思い切り睨み付けた。騎士なんて結局はこんなものだ。弱い立場の人間を守るどころか虐げるしか能のない最低な連中。中にはまともな騎士もいるのだろうが、それは本当に数える程だ。

「なんだよ、その目は」

「騎士様に対して失礼じゃねえのか!?」

さっきとは別の騎士が私に手を伸ばす。私は咄嗟に持っていた買い物カゴを騎士の顔目掛けて振りかぶり、それは見事に顔面に直撃した。続けざまにその騎士の足を力の限り踏み付ける。
まさか下町の小娘にそんなことをされるなどと思いもしなかったらしい騎士達は一瞬怯んだ。その隙に私は身を翻し、来た道を駆け出した。

下町の入り組んだ地形はよく知った者ですら迷ってしまう程だ。そこに入り込んでしまえば彼らが私を捕まえることは出来ないはず…。
そう思いながら路地の角を曲がった時、不意に私の腕を何かが引っ張ってきた。私はそれに抗う間すら与えられず、そのまま路地裏に引きずり込まれてしまう。
私の手を引いたそれは、自分の方に私を抱き寄せ、口を塞いだ。

まさか、他に仲間がいたのか!?

その手に先程見たのと同じ手甲がはめられているのを見て私は内心で己の運命を悟った。騎士に弄ばれてきた知人を私は沢山見てきた。私も彼女達のようになってしまうのだと、珍しく諦めかけたその時。

「静かにしろ。私は君の味方だ」

不意に声が聞こえてきた。貫禄さえ感じさせる程の重低音。口を塞がれたまま、視線だけを上に向けるとそこにいたのはやはり騎士だった。長身で私よりいくらか年上だと思う。少し長めの銀髪が僅かに私の頬に触れる。だが、先程の輩とは明らかに違う所がある。私を見る目に、軽蔑とか卑しさとか、そういった類の感情が一切ない。むしろ慈しむような、そんな瞳がそこにあった。紅玉を溶かしたようなその瞳に私は暫く魅せられていた。

少しするとドタドタと品のない足音が辺りに響き渡り、これまた品のない男達の怒声が聞こえてきた。やがてそれらは徐々に遠ざかり、完全に聞こえなくなった頃、再び声がした。

「行ったようだな」

先と同じ重低音が私にそう告げた。が、彼の手は依然として私の口を塞いだままだ。それを伝える為に私は辛うじて自由の利く手で必死に彼の腕を引き剥がそうとした。そこでようやく彼は自分がまだ私を拘束していたということに気付いたらしく、「すまない」と短く告げてから手を離した。
やっと解放された私は咄嗟に身体を反転させ、彼を睨んだ。

「どうやら、無事だっ…」

彼が最後まで言葉を紡ぐよりも早く、私は彼の頬目掛けて平手打ちを繰り出した。

それが、私と彼…アレクセイ・ディノイアとの出会いだった。今でも信じられない。まるで仕組まれたかのような、絵に書いたような出会い方だ。
その時の彼のキョトンとした表情は今でもよく覚えている。

自分一人だけでも逃げられたとは言え、結果的に彼に助けられたというのに私は礼を言うよりも先に彼をひっぱたいた。突然のことで完全に混乱してしまっていた…と彼にはそう言い訳をしたが、本当のところを言ってしまうと、私は彼に…俗に言うところの「一目惚れ」をしてしまったのだ。

それが、私が騎士団入隊を決意した最初のきっかけ。
彼の傍にいること。私が私自身に課せた使命にも似た感情。

その日から、私は彼に恋をした。
彼の慈しむような瞳に…。

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霜弥様より頂きました相互小説で、『人魔戦争前のアレ×♀シュヴァ』をリクエストさせていただきました!

たたた、大将がヒーローすぎて素敵///シュヴァは霜弥様宅のシュヴァ姐でリクエストさせていただき…うふふ、大好きです!←


相互ありがとうございました、これからも萌を蓄えに参りますねVv←

[*BacK][NexT#]

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