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出逢い【参】



「少しで良いから食え。」

手にした暖かさ残る食材が入った器を腰を据えて床に置くサスケを見上げた後、クンクンと鼻鳴らして盛られた残飯に食らいつく子狐。

その様は宛(さなが)ら一心不乱と言ったもので。サスケはこんなにも快方に向かった子狐の野生の力に感心を重ね、ほっと胸を撫でおろす。

「うまいか?」

「きゅん!」

口回りの短い毛糸に雑穀をつけ、まるで人の言語を理解してるような鳴声は大人の狐とは違って幼く。その仕草や小さな姿を愛らしいとサスケは感じ柔らかく微笑む。


「そうか。良かったぜ。裕福な暮らしをしていた時だったらもっと良い物を食わせてやれたんだが…と母さんや父さんが気していたんでな。」


御狐様が家系代々の守り神である此の家は本来ならば神棚に供える心構えで接しなければ為らないのに…と零していた両親。皆無ではないが特別なる信仰心の無いサスケは崇めた態度で接しはせず。
傷ついた弱者の回復を素直に心内で喜んでいた。

「さて、飯を食ったら薬を塗り直すか…」


空になった器を持ち立ち上がり薬草を練り始めるとミコトが続きを買って出る。
サスケはミコトに任せて狩りに出る支度をフガクと共に始める。

今日は一緒にと猟銃の手入れをし終えた頃合い、二人を呼ぶミコトの声が響いた。

その声がした部屋へ足入れる。

奇声めいた呼び掛けは薬を塗り変えてやろうと、包帯を解いた時の物であったと判明するのに説明は要らなかった。


「……まさか一日で、こんなになんて…ーー」


何事もなかったかに金色の短毛で覆われ片足にあれだけ流血していた傷口は全くなく。これには余り物怖じをしないサスケも流石と吃驚した。

「此の奇跡なる回復力……稀なる風貌…‥ーーもしや‥」

勘ぐった科白を途切らせ唾飲みて下すフガクの云わんばかりなる事柄は簡易に知れる。


空気が変わった事を諭したのか否かは解りはせぬが、首を傾げる子狐。


山吹な色合いとは違う金色の毛並み…。碧眼。
確かに今までこんな狐は見たことはなかったがまさか‥…ーーと、サスケすらそう思えてならかったが、父や母のように特別な感情などは抱かず。驚愕せざる状況の反面で、すっかりと怪我が治り体力も戻った様子の子狐に良かったと喜び安堵していたのだった。


そんなサスケがフ‥と笑み息を漏らして背を向け、屋敷を出た刹那「きゅーん!」と後追う幼い鳴き声が直ぐ後ろから聴こえた。


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あきゅろす。
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