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出逢い【壱】

とある小さな村里の領主である名家うちはの長フガクは民の状況を把握し此を非常に深刻なる物と捉え、村民の貧困を僅かでもと謂わずして計り、質素なる生活を送りつつ重責となる国税をうちはの蓄えから納めていた。

優秀なる長兄イタチは幕府に遣える者として若いながらに抜擢され、都へ。御家の内情を知ったイタチは毎月、給金の殆どを仕送り。此なる事もあったがため配下とする村里の暮らしは他里と比べて比較的安定していたのだった。

末息子のサスケは兄の様な立派な人物へと志し、武道や勉学に勤しんでいたが日々が経つにつれ、幾許かでも己も家計に貢献せねばと手を休め、山狩りへ出掛けるようになった。

山の恵みを手摘む母や村里の女よりも遠く離れた獣多い山奥へ一人通い。猟銃を打ちては雉や鴨を狩り、罠を仕掛け兎や猪、鹿などを捕り、川では魚を釣り。と日や天候により区分して山の幸を家に運んだ。


天候が悪く山へと赴く事が出来なかった数日後、晴天を迎えを久々と山奥へ足入れる。

雉を一匹、猟った後、山中を更に奥にと辿れば己ではない誰かしらが仕掛けた罠に嵌って動けず、雨に濡れた毛並みを震わす子狐を発見し、近寄りて腰を落とす。



先祖代々より狐を崇めて来た家系な為か、力失せた小さな狐を放ってはおけず。刃立てる足枷を取り払い、怪我をした片足にさらし木綿の手拭いを巻き、冷えて意識も朧気な子狐の濡れ身を抱き上げ己の体温を分け与え。雉を得た事もあり今日は狩りをする事を止め、子狐を懐へ納めると急いで家へと帰っていった。


己部屋へと真っ直ぐ向かい入りて襖を閉ざし、陽当たりの良い窓際の畳上へ柔らかな座布団を敷き、弱々しくも苦しそうな呼気を弾ませる小さな狐を其処へと置いて、一旦巻いた布地を外して足に薬を塗り、布に水を含ませて獣口を拭い…と看病を施す。

乾いていく金色の毛糸を緩やかに撫で回復を願うのであった。

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あきゅろす。
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