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ブランチタイムA

聞く気など毛頭ないが読解不明なる言語を大声で喋り、意味なく笑う。その声が勝手に鼓膜を素通りして行く。

放たれる甘ったるい香水だか化粧だかの匂いに食欲は失せ、苛立ちを覚え始め、口に運んでいた手が止まる。
まだ現れないチビへと苛立ちの矛先が向き、催促するかに舌打ちをした頃だった。

「よッ!!」

通路側に向いてる背中から飛び込んだ陽気な掛け声と同時、叩かれた肩。

「オレってば、色々じいちゃんに制限されてるみてーで、コッチじゃおいろけの術以外、コレしか出来なかったってばよ。」

溜め息を吐きながら席へと赴く金髪頭は、俺と同じ年くらいの背格好をし俺と全く同じ服装をその身に纏わせていた。


「何故、…同じ服なんだよ。」

「んー‥、オレもその辺はよくわかんねんだけどさ、きっとコッチにいるヤツ、お前くれェしか知んねーからじゃねーかな?」

まるで他人事のような口振りでの返答を深くは追及せず、茶を一口啜る。

ナルトは元の席へと座った途端、食べかけのハンバーガーに手を伸ばす。それから我慢ならずと言った感じで頬張り続けていた。

成長しても変わらない大きな縦長い丸い瞳だけを右や左へと一度二度流し、細かに砕いてる様子を表す頬をもごもごと動かして咀嚼を繰り返す。


「お前の言った通りあっという間に人間だらけんなっちまったな!この店。」

「…ああ。」


周囲とは見てくれの違う、天然の碧い瞳に金色の髪。外国人は珍しくもない世の中だが、愛嬌のある華やかな顔立ちに加え無駄に馬鹿デカい声を発してはしゃぐ様子は人目を惹かせていた。隣に座った流行り女共もナルトに視線を浴びせている。そして俺の顔をもチラチラ見、何やらヒソヒソと耳打ちし始めていた。

そんな注目を浴びてる事に気付きもしないナルトは、ハンバーガーとナゲットをそれぞれの手に持ち、ムシャムシャと交互にその味を愉しんでいる。その姿に止まっていた手が再び好物を挟んだハンバーガーを口へと促した。


「こっちは鶏だってわかっけど、こっちは初めてだってばよ!、一体なんの肉なんだ?」

「それは牛だ…」

「牛って牛乳の牛か!」

「…ああ」

「牛、…山にはいなかったかんな。牛は獲って食ったことなかったけどこんなにうまかったんだな…。ーー…牛って、すげーや。」

感動してじーんとしてる姿も俺と同年代な背格好だと酷く可笑しく不釣り合いだ。


半分ほどまで食したハンバーガーを口に啣えたまま、何が入ってるかは開けてからの御楽しみといったオマケの袋を手に持ち開けようとする行儀の悪さには流石に眉間が狭まる。

「そんなもん、食ってからにしろ…」


透かさずその袋を取り上げれば、ハッと見張った碧を直ぐさま反論するが如く上目を向かせ訴えるも、更に双眸を据えると事態を把握したのか。両手でハンバーガーを持ち自棄を起こしたようにガツガツと食い、頬の膨らみにものか拘わらずナゲットを両手で掴み口へ放り込んだ。

パンパンに膨らみきった両頬、おちょぼと化した口、忙しなく動く顎。
こんな漫画みたいな面を見たのは初めてで、あと三口程で食い終わるハンバーガーを食う事なく、ナルトのリスのように膨れ上がった頬が減る様子をただポカンと見詰めていた。
ゴクンと咀嚼した物を飲み込み、広げた片手を差し出すまで。

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