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マツゲマン

慣れない世話に疲れたのか寝具に入り眼と閉じて間も無く寝入ってしまった。


「なあ…、なあ…」

身体を揺さぶる手、小さく掛ける声に重い瞼を開く。


「何だよ…?」

「なんかアッチの部屋、オバケがいて怖くてさ。」

こいつだって似たようなモンだろが。
ったく、何言ってんだか…

「オレさ、苦手なんだ。オバケとかオバケとか生野菜とか!」

ベッドの上に座り込んで枕を抱え、ブルブル震えて訴える涙目。


「我慢しろ…。」


「我慢して我慢してみたけどダメだったからわざわざ起こしたってーのによ!お前ってば全ッ然ッだなっ!」

抱えてた枕を俺の顔に落として押し付けやがった。

払い退けて上身を起こし一体何なんだ、と問えば睨み付け頭を枕で叩く始末。


「何かいやな予感がゾクゾクしたからコッチの部屋にって決めたのに、お前がワガママ言ってダメっつって、そんでなんだぞ!バカァ!!」


「ここは俺の部屋だ。何があろうが居候なら我慢しろ。嫌なら出てけ。むしろその方が有り難い。」

一日だけで沢山だ。こんなガキの面倒をみるのは……

眠気で不機嫌な俺は苛立ちを隠せず、あからさまになって眉を顰め零していた。

「…わかった。我慢する。オレってばマツゲバサバサなシワ仮面な兄ちゃんの亡霊と一緒に寝てみっから…」


再び枕を抱えこみベッドから降りてうなだれたまま、元の部屋へとトボトボ帰る小さな背中。

納得したなら良いと俺も布団へと横になり瞼閉じた。


「うっぎゃァアアアアーーー!!」

その途端に聴こえた喧しい声。
何事かと半ば仕方無しに飛び起き、扉が開き放しになっている灯りが点いたままの部屋へ行くと、思い切り放り投げたのか、枕は床に落ち。布団を被り扇型に広がった数ある尾が生えた尻を震わせてるチビの姿が視界に入った。


「どうした?」


「…いる!いる!いるってばよ…」

見渡してもコイツと俺以外、誰もいない。虫一匹の気配すらない。


「俺はいるが、…何だ?」

「そうじゃねェ!ちっげーっつーの!!」

バサッと布団から出て怒鳴ったと同時にボカスカ胸を叩かれたと思いきや、がっしりしがみつき。
涙目となった大きな瞳で見上げつつ「あそこ」と指差し訴える。


「で、出たんだってばァ!ってか、ずっといんだよ!!、お前に似てるマツゲマンがッッ!」


「俺に似たマツゲマン?」

示す方位を眼凝らし見ても何も誰もいないが、こいつには見えるのかも知れない。

「…ああ、ありゃ死んだ俺の兄貴だ。お前があまりにワガママなんで、きっと化けて出たんだろう…」


「オレ、オレっ…、いいこ目指す!!、じっちゃんにも怒らんねーように、イタズラは少しだけやめる!だから、だからっ!!」

からかい混じえて弱味につけこんだ物言いをしたが、考えてみりゃあ…我慢するとさっき大人しく部屋に戻ったのはある程度弁えたからか……

そう頭に描くと、しがみついて離れやしない背中を宥めすかすように叩いていた。意地悪くニヤリと笑った顔はフと息を抜かして和らいだものへ変えて……。


恐怖と反省から溢れた涙で寝間着を少し濡らされるもチビを腕の中に収めていた。

幼い頃、俺もこんな風に泣いた時があったかもな…と懐かしみながら


「…一緒に寝るか?」


自然とそう口にした言葉に、眼を拳で擦った後チビは小さく頷いた。

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あきゅろす。
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