制度
共存した空間の中で感じる暖かみが例え刹那なるものだとしても、何よりも代え難いひとときに思える。
ナルトは俺の不安を見抜いたかに前足で胸板を押しあて、顔を上げた。
『まだ半分、あるってばよ。サスケの“特別な時間”は…』
口火切ったナルトの話によると、互いの言語を解読し、こうした接触や感触を得られるのは肉体と魂を繋げる紐状で出来た霊線が切れるまでだそうだ。
しかもそうした処置は、自殺以外の不慮の事故死で亡くなった者のみ、対象らしい。その“特別な時間”は49時間持続すると詞を付け加え、そして問い質す。
『病気や寿命なんかで命が危なくなったヤツが急に憑物が剥がれたみてーに元気よくなったりするだろ?』
「…ああ、俺も兄貴で体験したぜ。」
『ありゃな、神さんや仏さんがくれる“時間”なんだ。最期を踏まえて、楽しい時を大切なヤツらと過ごし、現世にとどまるコトなく笑って天国に旅立てるように……ってな。』
「なるほどな。それがない事故死の奴らにはこうした時間が死後に与えられるって訳か。」
『うん。そーいうコトだってばよ。だからな、魂の選択を間違えちゃなんねーんだぞ!』
「…魂の選択?」
『……不慮の事故死だけ、三つの選択権利が与えられんだ。
1つ、現世での再生と向上を望み、天国と呼ばれる霊界で魂の修行する。
2つ、現世で魂のみとなるも浮遊する事は出来ず、一定なるものに止まりそのものや地を守護し導く。
3つ、…コレだけは選んじゃいけねー選択だってばよ。もしそれを、選んで実行しちまったら、たちまち“特別な時間”は終わっちまう…』
「3つ目の選択とは一体なんだ?」
ナルトの表情が殊更神妙な面持ちに変わる。
『…生きてる人間を呪い殺す。ただしコレを選択した者は天の導きに背いた罪とし、輪廻転生のない地獄にて久遠なる魂の苦痛を味わう事となる…』
「つまり俺やサクラの場合は、俺達二人を死に追いやった奴を呪い死にする事が可能でも、それをするなってお前は言いたいんだな?」
『…そう、だってばよ。限られた時間の中で何が起ころうとコレだけは絶対にしちゃなんねーんだ。』
「………。」
ナルトは悲観したように大きなアーモンド型の碧瞳を長くと伏せて、俺に約束をするよう言付けた。
「それなら気掛かりな事が一つある。」
『…うん。』
俺の意図を言わずとも理解したかにナルトは一つ頷いた。
『生きてようが死んでようが、人間を殺しちゃダメ!!。
だから約束して欲しい!これから何があってもサスケ、お前は再生の選択を選んで天国に行くってコトを!』
「ああ、約束する。」
必死に訴えるナルトを否定出来る理由は何一つとて見つからず。『指切りゲンマン』と言って右前足を差しつけた。
まるで犬が“お手”をするようにそれを俺の小指間に乗せ、一番外側にある肉球から丸み帯びた爪を伸ばし、俺の小指先にちょこんと触れ微笑むかに瞳を糸状に撓めた。
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