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片時



『……サスケ、…サスケェ‥』

頬にざらつく舌の感触で目を覚ます。
真っ先に視界に宿る小さなナルトの姿。

「ナル…ト…?」

『サスケ!』

あんな瀕死の身で一体どうやって、自宅に帰ったのだろうか?

いや、それも不思議なんだが……――

「ナルト。」

『?』

「お前、何で人間の言葉が喋れるんだ?」

床から身を起こしつつ、某アニメの猫型モンスターを彷彿させるような見識で俺の名を呼んだナルトへと疑問を投げかけた。

『……それはさ、オレが人間の言葉を理解してんじゃなくて、サスケがオレ言葉を理解出来る身になっちまったんだってばよ。』

「あの事故で頭を強打したのが原因って訳か?」

『……うん。』

猫の言語を理解し、会話が出来る。

そんな漫画のような有り得ない能力が身についたと言うのに、ナルトは喜ぶどころか逆に酷く哀しげに視線を逸らし、覇気失せて沈みきった声で短くと言葉を返しやがったのが、やけに不自然に思えた。

「俺と話せて嬉しくねーのかよ?」

『………結局オレはお前を守れなかったんだ。昔、指切りゲンマンしたってェのに…』

「指切り?…一体なんの事だ?」

『覚えてても困るコトだから気にしなくていいってばよ!』

聞かなかった事にしろと訴え、笑うよう糸目を撓めて、ナルトは誤魔化すかに立てた膝へと頬を擦り寄せる。
コイツが何かを隠しているのは間違いない。

それを追求するよりも気になっているのはナルトの空腹具合で。
俺は立ち上がって硬直した掌をゆっくりと開き、小さめの缶詰めの上蓋にあるプルタブを引き、空の器にそれの中味を容れた。

「ホラ、食え。腹減ってんだろ?」

『うん、ありがとサスケ。』

やはり随分と腹を空かせてたようだ。
夢中で食ってやがる。

サクラを助けてやれなかった情けなさと無念は残るが、ナルトの空腹を満たす事が出来たのを良として、後ろめたさが残る思いを僅かに払拭させていた。金糸纏う、丸く愛らしい背中を見つめながらに。

しかしそんな至福は一時のものであった事を、この後すぐに識らされる。

ナルトの言葉によって……





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あきゅろす。
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