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distance-3



『……――サスケ‥』



「……ナルト…」



あいつの声が俺を呼んだ気がして、縋りつくデイダラを振りほどく。


乱れた衣服を整え
立ち上がり靴を履き
「寂しい」と嘆きイタチの代わりに俺を必要としたデイダラに振り返る事なく外に飛び出した。



暗い隣り町の路地を方向定めて走る。



ひたすらに走る。



全力で息を切らして
何もかも忘れて



『あの場所』へと……






もうどれくらい走り続けただろうか、
歩きたくなる程に息継ぎするのが辛い。





後少しだ、と己を励ましナルトが待っているだろう事を疑わずに走る事を続けていた。








「…はぁ……っ……ぁ………ナル‥ト…」




漸く到着すると



そこにナルトの姿はなく、当然かと納得しながら何となしに安堵したような気分になる。


携帯を取り出し時刻を見ると二時間の遅刻……。




「メールしねェと…」



とにかく詫びたくて
片手で携帯を操作し文字を打つ。


今日は悪かった。
とだけ……







送信し携帯をポケットの内に戻した時に
不意にコンクリの床に書かれた鉛筆文字に気付く。




バイバイ






ナルトの字だ…





単に待ち切れず
「また」と言う意味合いでの文字なのか
それとも
やはり頭に来て別れを告げる意味合いなのか、どちらかは分からないがいくら温厚な奴だろうと、約束を破った奴に対して怒りや呆れといった感情を持つのは当然だろう。





返信はないが再びとメールを飛ばす。




言い訳などしたくない。悪いのは俺だ。




都合はいいだろうが
最悪の事態だけは免れたい。



待っても来ない返信。


気が気でない。


あいつはナルトは
もっと気が気でなくとし此処で俺を待っていただろう。



ナルトに幾度か電話をしたが、同じ事を繰り返す交換士の音声と留守番へ転送。



電池切れで、電源を入れられないなら未だ帰路を辿ってる途中かも知れん。


ナルトの形跡を追いかけるようにあいつの自宅までの道を走り辿る。



あいつの自宅前まで来たが灯は消えていて
もしかしたら
電源を切ったまま眠ってしまったのかもと
憶測し、明日の朝になったら謝ろうと帰宅。










………翌朝



いくら待っても
いつもの場所にナルトは現れず……




教室にも現れず……






メールも電話もなく



















ナルトの姿を見る事が出来ず
連絡も取れずな日々が続き……











携帯は通信機能を失った、ただのガラクタと化した。


パソコンも起動はするが通信手段を失い。




テレビもノイズ画面と音を発するだけの廃棄物となった。



ラジオや新聞でしか入らない情報

それ程までに戦争は深刻なものとなっていたと身に染みた、連中は不安を募らせ授業にも影響し……
それでも何故か学校は休校にならず、この町は常の風景を保ち続けていた。







色褪せた世界……




ナルトの姿を見たのは何日か前だった。





ほんの数日が何週間に変わり……




床に残されたメッセージの意味を、はっきりと理解する。





あの日…

たかをくくり
ナルトに甘えていた。


デイダラを無視してサッサとナルトに逢いに行けば良かった。


後悔の念に胸が軋む。




居なくなったナルトの鮮やかな笑顔が焦げついて離れない……




俺の名を呼ぶ声




手を握る感触……








ナルト……








………ナルト







俺がお前を傷つけた。




なのに



一目でいいから


逢いたいと願う。







毎日
気が付けばいつの間にか、この場所で佇んでいた。



俺とお前しか知らない

あの日約束した場所。




床に書かれた四文字を靴裏で踏み擦り




夕空を扇ぐ。





鉛の様な眼を向け
夕陽に似た朱色の機体を探すが見つからず。









ペンを取り出し
床へと腰を降ろして
ナルトの真似ごとをしてみる。








逢いたい






ナルトの瞳に映らないだろう文字を残しては消しを繰り返す……





今日も恐らく明日も…




そして途方に暮れる……




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あきゅろす。
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