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accident-2


意識ははっきりしてくるも、サスケは目を覚ましては眠る生活を余儀無くと送り続けていた。





いつも
悪夢に魘され覚醒する━━━


「うあああァァーーっ!!」

叫び声を発したと共に起き上がり、包帯取れぬ頭を掻き毟るような指つきで抱え、脳裏へ媚びりついた残酷な映像が彼の精神を取り乱す。

「サスケ君!落ち着いて!」

「どけ…!早くしねーと死んじまうだろが!」

直ちに駆け寄った看護師の手を振り払い、注した点滴や酸素を送る細い管、心電図を作る配線すらも無視してベッドから降り立ち。瞼の裏側にのみ存在する家族の残像を追いかけては手を差し伸べ必死となるも、実際は何も掴み取れずに虚しく空を斬るのみを繰り返す。

「うっ…ッ」

欠乏した要素に眩暈を感じ額を押さえるが、一向に実在しない家族の救出を試みる事を止める気配はない。
現れた医師達に羽交い締めにされとも意志は曲げず、抵抗の限りを尽くすがしかし、13歳の痛手を負った少年の力など到底適う筈はなく、馴れた大人の手練によりベッドへと取り押さえられてしまう。

「離せっ、クソッ!離しやがれ!!」

「大丈夫だから落ち着こうね。」

「早く、アンタら早く俺の家族を助けろよ!」

家族の救護を行わない大人達に責務を追及し錯乱するサスケをこれ以上、興奮させては危険だとの判断で睡眠剤が注入されれば、程無くと止む抵抗と共に、その瞳に宿る家族の姿が闇へと澱みゆく。

「…ううっ、…兄さん、……母‥さ…ん、…父…さ―――‥」

遠退く意識の淵で唇を震わせたのを最後に、サスケは眠りへと陥り。こうして身体は休息を得るも、深層に残った心象は片時もなく安らぎを得る事無く。目覚めれば脳裏に焼き付いた景色が再び彼の現実を掻き消して、また彼を混沌なる時へと引き戻す。



この様な進展のない日々を繰り返したのは、記憶障害に併合して精神が錯乱してしまうが為で。故にサスケは、此処が病院の一室で現在は安静を強いられている現状を、何一つ全く把握する事が出来ずな侭であった。

拷問にも似た状況でベッドに収容されるサスケを目の当たりにする度、担当医師のシズネも彼の辛さを痛感していた。

一過性とは言え、トラウマからなる記憶障害は、それだけでも相当厄介で精神や体力の消耗を造る。サスケの場合はそれに加え脳下垂体の前部損傷による記憶障害をも伴っているから余計に厄介だ。

重なる二つの後遺症は通常の生活に多大な支障を来(きた)し、これからも彼に幾多な困難を与えるだろう。

「いつまでもこんな日々を繰り返すのは、患者にとって余りにも酷だ。」

サスケの手術を担当した病院長の綱手を交え、サスケの治療方針についてカンファレンス(症例検討会議)が執り行われるも、試行錯誤とした治療は特効とはなられず。ただ徒(いたずら)に時間を巻き戻したような日々が過ぎゆく一方だった。





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あきゅろす。
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