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accident-1


三年前のとある夏。
新しく設立された島国初の巨大ショッピングパークの完成に伴い、それを所有し島国開発に貢献した扇物産予南国支社長であるサスケの父、うちはフガクは家族を連れてこの先行オープンの祝賀に参加をした。

この日は朝から太陽が燦々と照り、突き刺さる陽射しが肌を焦がす程に暑く、かと思えば突如として豪雨に見舞われる、そんな熱帯地方特有の真夏の気候で、馴れない本国からの観光客を困惑させたが、招待を受けた来訪者達は建物内で、その変容ぶりを物珍しくと目を瞠るだけであった。

サスケは堅苦しい時を遣り過ごした後、久々に顔を合わせた唯一無二と慕う兄と買い物に出向き、首都圏外の国や各企業やらの研究施設が集まる、言わばシンクタンクと呼ばれる場所に位置する国立高等学部寄宿舎での生活ぶりや学業の内容問いては耳を傾け、己も中学を卒業したら同校に必ず…と、目標を掲げる。

夕食は一流のシェフが腕を奮う料理店ではなく、地元の輩がこのショッピングパーク内に出店したという郷土料理店で家族揃って此処ならではの料理に舌鼓を打ち、久しぶりの団欒を過ごす。
無口な父はこの開発工期が終わるまで忙しさにかまけ、家族の事など微塵にも構わずと思えたのだが、実はそうでなかったと、箸を交えながらに穏やかな装いを表情につける父フガクと母ミコトの久しい笑顔でそれを知り、考え過ぎだったとサスケは安堵に箸をすすめた。

そうして夏休みを利用し此方へと訪れた兄と共に、現在自宅とする邸宅へと向かう帰り道、予期しなかった事態がサスケの家族を襲う。


比較的見通しもよく、幅も広い海岸線を眼下に置く国道で暴走した一台の大型トラックがカーブを曲がり切れず、対向車車線を大幅に越えて、真っ正面からサスケと家族を乗せたリムジンに激突したのだ。

反射的に運転手がハンドルを切るも、父の気に入っていた大きな外国車は人身を守る装備も虚しく、衝撃を分散させる車体構造により呆気なく大破して、海へと転落した。

車外へと放り出されるサスケを咄嗟に抱き包み、衝撃から身を守ろうと共に空中へと飛び出た兄イタチの敏捷(びんしょう)な対応のおかげで、サスケは一命を取り留めた。
それでも、意識不明の重態となったのは余りに加わった負荷なる動力の所為だ。

人も車も多く通行する場所が唯一幸いしてか、人命優先とする事故処理が直ぐさま執り行われる。
大きな病院も比較的近くにあり此もまた不幸中の幸いであった。

すぐに検査を終え、長時間に渡る大幅な緊急手術が執り行われる。

手術には何とか耐えたサスケだったが、依然として予断の許されない状況に居り、生と死の硲(はざま)を何日も彷徨う。

この件はトラックの運転手の泥酔による財閥グループの一家を襲った悲惨な事故として全国に大々的に報道されるが、重態の身のサスケには届かずに。


峠を越え小康状態となり、回復に向かってはいるが、意識を取り戻す事なくと更にサスケは眠り続けた。

それから一週間が過ぎ、漸くと彼が目を覚ます。

がしかし、その時にはもう家族は荼毘(だび)に臥せられ、葬儀も終わり、ニュース番組でこの事故を取り上げる事もなくなっていた。



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あきゅろす。
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