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「待たせちまってわりィ。追試、あってさ。」
「…気にするな。頼んだのはこっちなんだ。」
サスケは浜辺に降りる段数が余りない緩いスロープの階段に座って彼が来るのを心待ちにしていたのだが、そんな心情を悟られないがためか漆黒の髪を俄かに揺れらして夕凪に短く切れる息を流し、茜色の空を見上げたままそう告げ。
それから申し訳なさそうに片手で後ろ髪をポリポリと掻く少年へと映して隣に立てかけてあったスケッチブックを手に取り広げた。
「この辺で立ってりゃいいんだったよな。」
「別に座ったって良いんだぜ。」
「そんじゃ、そうさせてもらおっかなっと!」
地平線を背後にしてドサッと学生鞄を置きその上に腰を降ろしてニィっと笑った、この少年のような金色の髪や碧い瞳はこの島内では決して珍しいものではない。
それはこの島には長年、西洋の大国が支配する軍事的施設があり、西洋の軍人などが多く生活していたからである。
美しく穏やかな海とは相反して、この島には深く騒然した、一言ではとても語りきれない歴史がある。
壮観なる景色や自然は誰のものでも無いと云うのに。
「…何故、…所有したがる。」
「へ?、何、なんか言った?」
「…いや。」
サスケはこの島の歴史を簡易な知識以上に深く知ろうとはしなかった。
それは生まれ故郷じゃないからだとか興味が無いからだとか、そう云った問題ではなく、知ったばかりに失ってしまう物が多いからである。
成績はトップクラス、運動神経も良く何をしても優秀であったサスケは、常に皆に一目置かれる存在であった。
それは良い意味でも悪い意味でもだ。
そう、決して奢り高ぶる事もなく、幸せに暮らしていた三年前のあの夏の日までは。
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