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Love sound-3


気が付くと“船”は
地球を離れていた。



当然ながら
初めて漂う宇宙空間。


初めて見た
地球はテレビや写真で見たように、青く綺麗な星だった。



「……‥━━。」

圧倒され感慨に耽り暫く眺め、寡黙となって…‥目蓋を落とし
地球とナルトを照らし合わせていた。


瞼裏に
浮かびあがる地球。


ナルトの姿が瞳珠に焼き付く。



地球の
そこに生きてた者達の傷が、ナルトに重なる…


何とも言えない
切なさや苦しさ
愛おしいさに胸を支配され頭を項垂れる…──


俺の中の下らない
劣等感や虚無感、喪失感など、ナルトやこの星、そして宿り失せた生命に比べたら、実にちっぽけで滑稽なものだ…



『‥サ…‥ス‥ケ…、…ど──…‥した…?
…腹─…‥……痛ェ───…ン‥…か?』


不意に滲み出た水質を拳で拭い、眼を開き顔をあげるとナルトの光は粒子ほどに失せ、ザーッとした不協和音に音声は途切られ‥…
今にも消えてしまいそうになっていた。



俺が哀しんだり嘆いたりしていると灯が失せて行くような気がし、感傷を逃がしナルトへ視線を向け、繕うかな言葉を捜す。




「…ああ、そういや腹減ったな。何か食うもん、あるか?」


『あッ!…‥そっか、人間って飯食うもんな…』


闘う事に明け暮れ
守る事に必死になってたナルトは生き物が飯を食う事を忘れていたと悄気たように呟いた。さっきよりもハッキリとした音声で…








そうだった…






これはナルトの意識(なか)であり俺の意識(なか)‥…──だったな。






『…何とか、頑張ってみっから待っててな!』


「‥‥…何とかって…何か材料とかあるのか?」


『…‥うーんと、…何もねーけど‥大丈夫!』


暫く物を言わず何か対策を練っているのか、はたまた困惑して瞬いているのか…‥


『……‥ごめん‥…』


「…‥‥ウスラトンカチ。」



“薄いトンカチは 使えない”との意味がとある職専用語から由来する野次を発し、笑っていた。
ナルトらしいとククと声を殺し笑っていた。

その時だった。



小さな光はナルトの輪郭をはっきりと描き出したのだ。



「…‥え?」


「…!!?、…ナルト!」

「なっ、…何で?何でオレってばッ…!!」



全裸で俺の目前に現れたナルト。


思わず眼が釘付けになり、抱き締めた、……が。


「ダ、ダメ、ダメ!
オレってば映像だから触れらんねーんだ!」

ナルトの肌を擦り抜けてしまう腕。

しかしナルトの姿が瞳に映り、離れてはくれない。

触れられなくても
触れている気がして。


この手が覚えている
ナルトの感触…‥


「そんな事は関係ない。それより裸でいきなり現れるとは…誘ってんのかよ?」

「バ、バカ、違ェって!そんなんじゃねーってばよ!」


「お前、エッチしたりねーとか日記に書いてたろ?」


「…あ、‥‥うう‥っ、そう─‥だけど…、今オレが裸なのはそれとはちげーんだぞ!」

真っ赤になって否定するナルト。
ますます、揶揄いたくなる。


「へェ、なら何故こんな恰好してんだよ?」

「…さっき、言ったろ?、ココはオレん中で…サスケ、お前の中に伝えてんだって。」


…‥この世界はナルトの中で造られたものであると同時、俺の中へと伝達している情報。
眼には映るが
あくまでもナルトが見せてくれてる映像。
触れられないのは百も承知だ。


と、いう事は…‥
現在のナルトの姿は俺フィルターを通して反映したもの…

「フッ、最後の印象が余りにも強烈だったからな…」


「…あんだけヤったのに…‥サスケってば‥」

「お前こそ、シたいって日記でほざいてたじゃねーか‥」

…触れる感触は無くとも構わなかった。

俯いて黙りこくるナルトの頬を両手辿り
肩へ、胸へ、脇へ
とゆっくりと連ね
腰の外郭を縁取る。


「…や‥っ…、何か…本当に触られてるみたい‥だってばよ‥」


「…みたいじゃなくて‥触れてるんだ、当然だろ?」


「…‥サスケ‥っ…」

腕を広げ伸ばして
投影なる裸体を実態のある俺に密着させる。

その身や手の感触はある訳ねーのが理論であり道理だが、擦り抜けてる感覚もなく…
俺達は抱き合っていた。

「‥…なあ、サスケ‥」

耳許に掠めた声の吐息がないのも当然。
だが声は確りと鼓膜へと伝わっていた。

「何だ?…ヤりたくなっちまったか?」

ニヤリと唇角をあげ髪に口付けるとナルトは頭を横振り違うと否定し『‥…バカ、』と呟いてから微笑み、触れられない俺の胸にと片耳を押し付けた。


『…‥聴こえる‥、サスケのトクンって音。……生きてる音──‥』


「…‥ああ。」


『‥…サスケの音、……‥好き──‥』


生きてる者が当たり前と奏でる旋律を慈しみ胸上に口付けるナルトからは
俺の発する音は聴こえない…


最終兵器にされてから…‥──聞こえてはこない心音。



だが、俺は聴いていた。いつも、いつだって聴えてた。


触れ合う度に
口吻けを交わす毎に
抱き締める都度に…


「ナルトのも…‥聴こえてるぜ‥」


『…バカ、‥嘘吐き‥』


「…嘘じゃねェ、俺だけには聴こえんだよ…」

何も言わずにコクリと頷くと背中を丸め、俺の胸の中に蹲ってるナルトの映像は、くっきりとナルトの身体を現し、そして震えていた。









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