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Promise-12


閉ざした瞼を開くと
平坦となった地面に身を伏せていた。



「……う‥っ……」



………そして
眼睛を広げ見た大地の色に目を瞠(みは)らせる。




「…これ…は…‥──」




伏せた身を起こして
白一面の世界に一人佇み、
見渡せば




空も白く……


地平線もなく……──


さっき見たハズの景色もなく




全てが白一色に染まった世界に変わっていた。




これは
“ 夢 ”…なのだろうか?




それとも
さっきの世界が

  “ 夢 ”

     だったのか?



……仮にこっちが夢なら目が醒める感覚なんて無い筈。


だとすれば



これが

   “ 現実 ”





「…何も、……ねーじゃねェか…」




視界が無いのは当然と認識出来る闇よりも、視界を確保出来ている分、存在は無いと否定されてる感じがしてならず、境が見え無い真っさらな空間で清浄な白に脅威する…


――…そして
圧倒的に汚れのない色が、更にもっと俺の深層に白い空白を造り上げて行った…‥











何が見える?




何が見えた?





何も……

     見えやしない。










目を覚ましたら
何ひとつ持ってはいなかった



何もない世界で


何も持てず


何も見えず……───


何も出来ずに
  ただ佇んでいた。




音もなく


全てを包んだ

“ 白 ”

に忘却させた
感傷を蘇えらせて…──












「成績優秀にして運動能力も抜群。全てにおいて有能なイタチ君はこの我が校の誇りですよ」


「有り難う御座います。イタチは自慢の息子ですから。」


「ねぇ、母さん。」

「なあに、サスケ」


「父さんは兄さんばかりなんだな。」

オレのことはどうでもいいの?

兄さんしか父さんは見ちゃいない…


いつもいつも兄さんだけ。

母に問い掛ける最中
洩れそうになった質辞と『    』と言う思いを振り払った。








「勿論、サスケ君にも期待はしとるよ」



「イタチの弟なら頭良くて当たり前だよなァ」

当たり前じゃない。
頑張って勉強してんだよ!

一人で……。


オレを通して
兄さんしか見ていない眼。

『    』
そう思ったら余計にオレという存在が消されそうで噛み殺した。





「兄さん遊んで!」

「友達とは遊ばないのか?」

「友達なんていらないよ。何も学ぶものもないしさ…。それにオレは兄さんとこうしてる時間の方が為になるし楽しいんだ。」

幼少の頃から
兄しか見ていなかった。
ずっと兄を追いかけ
兄を見つめていた。
兄と過ごす時間が待ち遠しく…──、と。


「兄さん…、お帰り。」

「…ああ、ただいま。」

「こんばんはァ。初めまして。イタチの弟だな、うん?」

「━━━……。兄さん、この人‥誰? 」


「オイラ、デイダラってんだ。宜しくな!」


兄の帰りが
日増しに遅くなった
原因がわかった

兄の楽しい時間は
こいつと過ごす時間の方だったんだ。

兄を困惑させてはいけない。楽しい時間を邪魔したらいけないと逃がした言葉。


『…    』










脳裏を掠めた過去より彷彿した感情に項垂れる。

「必要‥ねーだろが…──」



誰もいない
何もない世界で倒錯し、覚醒した感傷は望んでは居ないもの。

しかし認識してしまった。



空白が殊更と広がる。

そして思いが拡張する。










例え罪を犯したとしても


傷付き、傷付けあったとしても…




破壊と修復を繰り返しても


何かを恨み
誰かを妬み、憎んでも…


生きる事に戸惑い

他人を忌み嫌っても


産まれた環境
産まれもった性質に
納得がいかず、


物事が上手く運ばず、

何もいらないと嘆いたとしても


過ちを繰り返し
罪と罰に
苛まれたとしても


例え戦いや争いにより
沢山の屍があったとしても


沢山の痛みや傷が待ち受けようとも



「俺は…‥──」







人が居る


   人間がいる



誰かが生きてる
     世界がいい








何故
人は、人を求め
こんなにも人のそばで生きたがるのか…?







失って気がついた



   目が醒めた



気が付けば



こんなにも…──




    『 寂 し い 』













    真っ白い更地
     真っ白な空


  これが俺の世界…… 


      俺の人生








「結局、…何もなかった…って事か…よ…」


白い灰被る地に跪く



哀しくて
      辛くて
  寂しくて
        虚しくて…

情けねーが溢れ出す感情…


『だからさ、だから…決めたんだ。やっぱ苦しいが続くのは、やだろーし…』


最後に残した、ナルトの日記の文字が頭に浮かんだ…、次々と止めどなく。




白い粒砂が
灰色へと変わていった。
どう仕様もなく溢れた寂情により零れ落ちた涙で…‥──


『でもな、サスケ!
お前は、お前だけは
最後までオレに付き合うんだぞ』


膝を落とし
力無く落ち臥した
影も出来ない場所。

粒珠が滲み灰色を作った其処だけを取り払うように一塵の風が吹き、微かな音を奏でていた。


『オレにとって大切で、かけがえのないモノは故郷でもねェ、地球でもねェ‥たった、ひとつだったんだ。』



何故だか
何かがある気がして、その場所を両手で掻き毟る。


『サスケが大好き。
サスケが一番好き。』




砂上の下に何かあると確執つけて、何かを見つけたくと必死に掘る。


掘って掘って掘り続けて、やっと何か固い物に触れた。


『こんなオレのコト最後まで恋人だって思ってくれてんなら……地球が最期の時に、ここでオレと逢って欲しい。そして一緒にいて欲しい…』



何かの破片だろうか。

それを手に取り五指で、さらり‥と白を拭い去る。










『……待ってるコトだけ許してな。』





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