Promise-11
永遠の眠りに就いた人々の亡骸の間をまだ渡り切れずとしていた。何とも言えない心境にかられ、何度、もうこれ以上は見たくないと深く目蓋を閉ざした事か……
隙間を捜すのさえ、難しい間隔。
込み上げる罪悪…。
俺達が起こした惨事な訳でもないが、まるで俺達が“俺達で在る為”に犠牲になったとも思えて来る。
自惚れるなと己を叱咤し、囚われを逃がし。奮起たくと近付く目的の場を見上げれば、山肌が崩れている事を知る。
「…!!?‥」
予期など
一つもしていなかった光景に足が止まった。
……あの場所へは行けない…。
約束を
また破っちまう
それよりも
この侭じゃ
逢えねェじゃねーか…
「クソッ…!」
まさか
土砂崩れを起こしているとは思いもよらずにいた。
沈着冷静に判断出来ていたら、当然な事態だろうに。
「……嘘、 ‥だろ?」
刮目し、打ち震えていた。
展 望 台 が な い
見上げた山は
樹もなく草もなく……
砂岩は崩れ、
地層は列を崩し、
有機な土色のみしか
存在して居らず…──。
「まさか、ナルトは…こうなる事を知ってて……なのか?」
家に帰れと残したのは意図的な物が含まれてたって訳か…。
「何故だ、ナルト。──何故……」
約束の地を此処に選んだ?
疑問が沸くと震える拳を固く握り、足許も見ずに走っていた。
完全に一つの事にしか念頭におけず、願わずに居られず。建物が在ろうが無かろうが、あの場所は存在すると決め付け、余計に気を焦らせ。遮断された断壁を至近にしては、切迫した状況に追い詰められ。崩れ落ちた土砂面に手を伸ばし、触れると惑いもせずに四肢を動かしていた。
点在している埋岩だけを頼りに捩登っていた。
展望台のあった場所へと。
『……ナルト…』
アイツの名を心内で何度、呼んだか分からねェ。
細心を払い出来るだけ慎重な動作を計らい、雨で濡れた傾斜の地肌に這い蹲って上を目指し登る。
確実に
約束の地へと近付いてると己を励まし、液状混ざる土に阻まれるような足場が続く最中、泥塗れとなり、必至とされた動作を繰り返す。
前に行くしかねェ…
進むしかねェ。
俺には
それしか残されちゃいない。
決して
なだらかと言えない角度。
滑り易く蒸気の上がる土……
さほど進んではないだろう。
熱帯びた土、
掴み憎い岩石の残骸
煮沸した赤い陽射しを照り付ける太陽…
風ひとつない薄い空気
現在の地点は捕らえられずだが、さほど進んでは無い事は理解出来る。
傾斜が続く滑る地面にもがき、足掻く。
『……ナルト』
指が痺れる。
手足の感覚さえも鈍る。
『──‥ナルト』
重力に逆らえずな身を支える腕の力と惰性する足で断崖を蹴り、這い上がる。
辿り着きたい
漸く理解した事を伝えたい。
頭を撫でて褒めてやりたい
冷たい身体を
抱き締めて暖めたいんだ。
“人間同士”
の温もりを
分かち合いたい…
「……ナル‥ト」
呼び名を口にし
腕を伸ばして土砂に指を突き立てた、その時だった。
「━━‥!!? 」
突如として
緩い地響きに襲われ、斜面が崩れた。
後、少しだったかも知れない
否、まだまだだった…
悔やみ切れねーが抗えずに、ただ身を伏して歯を食いしばりながら流れ落ちる土砂に塗れるしか出来ずにいた。
‥ナルト
…ナルト…‥──ッ!
叫んでいた。
アイツの名を心の中で執拗に……
衰える意識に抗うたびに
……これが
この星の答え
定まった運命…
約束はどうなる…?
最期まで……──
じゃなかったのか?
危ぶむ意識を呼び覚まし、そして蘇る確執。
何度でも辿ってやる。
また足掻き、もがいてやる。
地球(そっち)が
生きてる限り……
最期まで
付き合って欲しいんだろ…?
ナルトと同じく……──
そうやって
この星を挑発し、必ずと、誓っていた。
瞼を強くと閉ざし、繁盛に畝る大地へ抵抗著しくと、滑り墜ちる身を幾らかでも停留させたく膝や爪先に力を篭め、土砂を引っ掻き、握りつつ。
歪む顔、土砂に埋もれる事を虞れて瞼を強く閉じ、やがて零れ落ちる湿砂を上曳く線は緩やかになったとは知らず、臥せ身の傾きが変わって行く事に気が付き行く末に若干身を案じて息を吐いた俄かな時、気張っていた意識が攫われた。
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