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Promise-10




「…ナル…ト………」





唇が漸くと動いた。


指先に力を渡らせれば爪先に土の感触が食い入るのが知れる……



「…ぐ…う……っ‥」


歪む顔、皺よる眉間
靴の爪先で土を擦る…


震えが走る身体を起こす。
やっとの思いで…。



肘を付き膝を立てて立ち上がる。


変動で隆起した地を見詰める眼睛を瞬き、視線を起こす。


「…なっ…!!?」



瞳孔に宿った景観に動揺して後退り、暫く言葉を失う。





この町の建物は全て消失し、残されたのは
約束の場所がある小高い丘のような山と……
此処だけはと盛り上がった一段高い位置にいる俺の足下に寝転ぶ
無数の動かない人々……━━━。




隔たれた向こう側にある約束の場所に行くには、力尽きた町人達が伏せる……ここを渡らなければならない。








  「……何故──‥…だ…」





……何故、
俺にこんな映像(ビジョン)を見せる?




…━━これが


最後まで生き長らえる事を只管願い、叶えた者の役目だとでも言うのか…?




「……答え…ろよ、……神だか仏だか知らねーが、………何とか言え…!」







両腕を力なく下げ
叫んでいた…



一際、赤を誇張した空を見上げて返答など当然にして有る訳がねー空間で声を張り上げて……





置かれた状況を悟るには時間が掛かった




「…目を背けちゃならねー現実って奴かよ…」



ナルトが
これ以上に見てきただろう命の終焉…


見たくない


知りたくない


見なければ


知らなければ……


見ない方が

知らない方が…‥

幸せな事は多くある。







‥…しかし


俺達は知ってしまった…



見てしまった…





「なら…━━」と、加え一拍の間、フ…と呼気を抜かして挑むかに揶揄めかし笑う。
己を立場を理解したと、届かない象徴に見せ付けるように。


「きちんと見届けなきゃならねェ…」




そうだろ、ナルト…







傷付ける事しか出来ずな奴が、生かされた意味、出来る事……



懸命に生きた人々がこの星にして来た事……


気が遠くなるほどの時間をかけて、生きる為に快適な暮らしをと向上する為に傷付けてた。


癒す力は未来に託して、誰もが気にも止めず便利さを求めた。



反対する者もあっただろう…


今やらなければと実行した者も中にはいただろう。


だが
その力は小さく、
いつでも人類は都合良く、私欲に似たものを求め、破壊と修復を繰り返して来た。





そして
見えるものさえ…
見えなくなっちまった。








見て見ぬフリをしてきたからだ…


知らなきゃならねー事にさえ背き、逃げてきた。




使えなくなったとでも言うかの如く棄てたんだ…




辛い事は
全部ナルトに押し付けて、
片付けを始めた。




アイツは
  苦しみながら
     泣きながら

この景色を何度も何度も見て、ひっくり返った、おもちゃ箱に人形をしまうように
 手を…、伸ばした。





この星を生き長らえさせるよりも、別の星を選び似せて恐らく開発と言う名でこの星と同じく働きかけ、無理をさせ……
挙句、それさえも叶わなかった末路。
それに対しても罪を被り、謝り…そしてアイツはナルトで居られなくなった…


「そりゃあ、…そうだろうよ…。」




耐えられない光景…
無惨に重なり伏せる人々……





今にして知るなんて…

「……何て浅はか…なんだ…」




せめて…との思いで一段低い地へと足を降ろすと、深く息を吸い止め意を新たと決し、歩みを進める…






終わりが来るまで


生きる事を望み、


精一杯、生きた者達が
どんな思いで
ここまで
辿り着いたのかを…


眼(フィルター)に焼き付けて、伝えなきゃならない。




この星が…

ナルトが、
こうするしか…
なくなっちまった事を




 …この星に


この小さな町で最期を遂げた…
何千、何万の
計り知れない人々に……





このバランスが崩れた
空と大地に





 『すまない』
        ……と。















名前も顔も
知らないが確かに
同じ大地で暮らしてた


呼吸をしていた。


無常なる
   世界で……
















「――…母‥さん…」

「 父さん…」


母を守り抱く父…

母さんは、いつだって父さんを見守っていたんだぜ。

俺や兄を……
優しい眼差しと
優しい手で…

父さんはそれを守る為に……

「今更、…気付くなんて、な…」

唇を噛み締める。
強く強く……━━







その隣に
先立った兄の遺品を抱えた

デイダラ…

「…向こうで逢えたら
宜しく言っといてくれ。父さんと母さんを頼むとな……」




互いに見合うかに
横たわる

いのとヒナタ……
対照的だからこそ
常に二人でいた…
サクラを
失ってからは特に…‥




あれは…
確かセナと言ったか。

…希望溢れた瞳で語ってくれた…、この町の事を…──

その瞳も、今はもう
何も映す事なく閉じられた。

まだ、生きていたかっただろう幼い灯は…両脇にいる親に抱かれて消えたのだろう…




学校の教員だった
アスマ、紅……

アスマの腕には
紅が抱かれている。
紅の腕の中には…──

「…こんな世界に…何故…」


  産まれて数日の
  小さ過ぎる命…



至近で知った真実に
  足場が揺らぎ
   言葉が途切れた。





……何の為に、宿ったんだ?


何を願い託された…?



…与えられたのがこんな未来だなんて……



「…随分と…残酷、…だな‥」


やり切れずに
崩れた体勢…

確りと握った拳で
ひび割れた大地を殴り叩く。


やるせ無い理不尽さ
悔しさ、怒りが沸き上がる……




小さく弱い者が
至るまでの恐怖や痛みを思えば、代わってやれたらと考える。



しかし、この小さな赤ん坊が仮に一人で生き延びたとしても、余計、苦しむだけか……

摂理にしたら
耐えられないだろう…





『産まれて、空気を吸ったら、嬉しいって鳴くんだ。産まれた嬉しい、父ちゃんと母ちゃんの子で、よかったって…、みんな動物は鳴いて動くんだ。』


そんなような事を言っていた、ナルトの言葉が頭を過ぎる…




だとしたら、例え数日だとしても産まれた歓びは味わえたんだな…



「………こんな…世界でも…かよ…」





……それでも
生きたいと願った。


それは
こんな世界だとしても『歓び』を知っているからだ。





己に志しを戻し
身を再びと上げて

『歓びと希望を掲げ
    生きた者達』
を視界に入れ、
再びと、歩き出す……━━━





名も知らない黒髪を束ねた男を庇ったようにしてるのは
カカシ……






シカマルと
手を繋ぐキバの
胸上に力尽きた赤丸が眠り
その傍らには
色褪せた秋桜の花が、一輪…


腰を屈めて二人の安らかとした幸せに滲む寝顔を見る。


「…約束、…果たせて良かったな…。」


込み上げる物を堪えつつ、ダラリとした赤丸の稍開き加減の瞳を閉ざしてやろうと撫でる。

「………━━…」

確りと閉ざさせた瞳
冷たく強張った小さな身体に耐えていたものが溢れ、一雫こぼれる…


 「━━‥…俺も、………行って来るよ…」


二人と一匹に挨拶を向け、遺体を踏まない事に気を遣り…

後には振り返らず

ただ前を真っ直ぐ見詰めて……
  渡り歩いた。



















此の世に生きとし
生けるもの

その全ての『命』に限りが
あるならば…━━



教えて欲しい…



宿り失せた

想い篭る魂さえも


『儚きもの…』と


成ってしまうのか…











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あきゅろす。
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