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自転車を止めてあった元位置と置き止めた時、背後から肩を一つ叩かれる。


「チャリ泥棒、逮捕しちまうぞ…うん。」


特徴のある口癖を語尾に置く声の主に振り返る。

思った通りの人物を
表情変えずに見やる。

「…アンタのだったのか?」

こんな場所に自転車を止めるなんて案外近所に住んでたんだと予測するが、確か札幌の近くとか言ってた記憶に眉を顰める。


「何だい、謝罪もなしに嫌な顔しやがって!
どーせオイラはお前ら家族にとって疫病神みたいなモンだよ!クソッ。」

「別にそう言った訳じゃねーよ。ただ、この前会った場所の近くに住んでると聞いたが…何故、自転車がと詮索し不可解に思っただけだ。」


「ココだって、札幌からは近くの範疇に入るだろ?」

広大な土地柄の為か
数十kmの距離はそういった類に入ると考える奴は多いだろうが、以外だった……。


「隣り町の宿舎で暮らしてんだよ。チャリ泥棒。」


「泥棒なら、わざわざ返したりはしない。
少し、借りただけだ…。」


「加害者の癖に随分とエラソーだな、うん?そういうトコとか、そっくりだな。」


「…悪かったな。」

制服のズボンのポケットに両手を入れデイダラに背向け歩き出す。

「待てコラ!何処行くんだよ!」

「…学校だが……」


「今から学校かい?
学校まで社長出勤なんてエラソーな身分だな?」

「今日は、たまたまだ…。」


「お前はオイラに逮捕されたんだ、学校なんかに行かせないぞ…うん。」


確かに俺が悪いのは認めよう。
しかし
自転車を引きながら俺の肘を掴み歩行を邪魔するのが、うざい。


「なら、どうしたらいい?」


「学校なんかサボってオイラに付き合え。」

「………学校が終わったらじゃ駄目か?」


「……執行猶予として、許してやっか。学校はこの町の……」


「…ああ、アンタらが卒業した高校だ。」


「迎えに行くから必ず付き合えよ、うん?」


やっと開放されたと安息して学校へと足向ける。



……デイダラ。






アイツは俺の…――






思い起こせば
まだ13の時だった……


中学の時
卒業生として所属する部のOBとして、よく顔を出し指導をしてくれた。

マネージャーだったサクラもデイダラの事を存知ている。



その頃にはイタチと付き合っては別れを繰り返してたらしく、弟という立場の俺は厭おう無しに、それを知らされた。


誰も居なくなった部室。
アイツに似てると涙するデイダラに抱き締められ……


……そして……――







男同士での愛し方を知った……。








何が何だか分からずにあいつの中に俺を放ったのを覚えている。






性行為の心地好さからか、一時はアイツに想いを抱いた。



目でデイダラを追っちまってた様子から感付かれ、それを初恋だとサクラに仄めかされて、そうなのかと自覚はした。



だが……




ナルトを想う
現在の気持ちとは明らかに違っていた。


ナルトに恋して
気が付いた事が沢山ある。

デイダラと身を繋いだ過去よりも
ナルトと手を繋ぐ方が胸が高鳴る。


同じ髪色
同じような瞳の色


ナルトの色の方が俺には柔らかく鮮やかに映る。



景色が、違うんだ……


何も変わらずな小さな町の景色がナルトと並び手繋ぎ歩くと
風や陽の香りまで違ったように感じる。
陽光混ざる空気は暖かく、…風は季節の香を確かにと運び……
この坂を登りきった風景、家の屋根の色までアイツが居ると穏やかな風合いを醸し出す。


学校の門、
同じ形で並ぶ下駄箱…単調な廊下…
教室に列なす机……。級友達……



ナルトと同じ空間を共有していると思えば
その視点は何故か、普段よりも鮮明な物となる。





戦争が始まってから
授業には活気がなく
だらだらとする中
悠々と遅刻をかまし



そして淡々と時を過ごし、俺はナルトの居ない教室で片肘を着き
ナルトの事ばかり考えていた。





「サスケくん、まだ帰らないの?」


「…サクラか。」


「ナルト、今日お休みだったけど具合でも悪くしたのかしら?
アイツ何だか最近食欲ないみたいだったけど……。」


ナルトは食事を余り採らなくなった。
その代わりに栄養剤とやらを飲んでいるが……内薬の詳細は知らない。


「…明日は来ると思うぜ。」


「それならいいけどね。ねぇ、久し振りに途中まで一緒に帰らない?、たまにはサスケくんと一緒に……なんてナルトが知ったら怒るかしら。」


ナルトはサクラとは口論しながらも仲が良い。


「…途中、までだぞ。」

サクラと一緒に
教室を出る。


校門に差し掛かると
サクラが目を見張り、口元を緩ませた。

「あっ!デイダラ先輩、お久し振りです。」

「サクラもこの学校だったんだな…うん?」



こいつとの約束……
すっかり忘れてた。










「今日はどうしたんですか?」


「チャリ泥棒を逮捕しに来たんだ。」

ニィと笑う顔を俺に向ける。


「今朝、訳あって放置されていた自転車を借りた。それだけだ。」

「放置してたワケじゃねーぞ、少しだけ公園脇に止めてトイレを借りてただけだい。
そんなコトよりオイラ、あの坂を漕ぎ上げたら疲れちまった。後乗っから漕いでおくれよ。」

仕方無いと自転車のハンドルを握りサドルに腰を降ろす。


「悪いがサクラ、……またな。」


「あ…うん、じゃあねサスケくん。デイダラ先輩も、またね?」

軽く手振るサクラを後にして
自宅まで送迎しろと命じるデイダラの言うがままとペダルを漕ぎ、隣り町まで向かう。


自衛隊官舎と書かれた敷地へと侵入し
建売住宅のように並ぶ住居の一棟前に自転車を止める。

「アンタ自衛隊なのか?」


なら、ナルトの事を知っているハズ……

「外で立ち話もなんだから、中入れよ。」


デイダラの家の中へと招かれ居間にと腰を降ろす。

テーブルに置かれた麦茶と和菓子。

「甘い物は苦手だ…。」

「ラッキー!それじゃ、この団子は頂くぜ。」


「…アンタ、イタチとはどうなったんだ?」

「うん?今は戦争で駆り出されちまって全然会ってねーけど毎日連絡はあるぞ。」


兄との関係は続いてたのか。

「自衛隊に勤めてるかよ…、あいつ…」


「優秀みてぇだぞ、オイラの旦那。強エし頭良いし、だからオイラはこんな良い処に住んでられんだ。」


なるほどな。
口振りからして
こいつは自衛隊とは無関係で兄とは結婚したらしい。


「夕飯、食ってけよ。一人で食っても減らなくて困ってたんだ、カレー。」

明るい口調だが寂しさを漂わせる夕飯の誘い。恐らくこんな風に会う事はないだろうと断る術を失せ、頷いた。

久し振りに人と一緒に囲む食卓だと喜ぶ顔が本当に嬉しそうだった……。





夕飯を食べ終え時計を見ると7時を回っていた。

ナルトは、まだ帰って来ないのだろうか?


待っているが連絡がない。



「ん?…何だか暗い面が更に暗いがどしたんだ?」


「いや、何でも……」


メロディが鳴り制服から振動が伝わる。
ナルトからのメールだ。


携帯を開き
8時に俺達の秘密基地でと返信を打つ。

わかった、待ってっから。と短い文字が直ぐに返ってきた。



「今度はニヤついて…へんな奴だな?」


「っるせー‥」


「恋人かい?」


「…ああ。」


「サスケはモテるかんな、羨ましいぜ?彼女が。」

「彼女じゃねーよ、男だ。」


「へー‥、もしかしてお前まで、そっちに走ったのはオイラのセイ?」


「馬鹿か、そんなんじゃねーよ…」


むしろ忌まわしい記憶だ……


「兄弟揃ってなんて知ったら、あの頑固で見栄っ張りな父上様が悲しむぞ…うん?」


言われなくても百も承知なんだよ…


「…もう帰るぜ、時間だからな。」


「待てよ!
オイラを独りにするなっ!」


立ち上がろうとした際に突如と勢いよく突き飛ばすように抱きつかれ、バランスを保てず床へと背中を預けた。



「…サスケ…、オイラの事、もうキライかい?」

「嫌いじゃねーよ」

「じゃあ…少しは、まだ好きか?」

「好きなのはアイツだけだ。」

「やっぱり兄弟だな…はっきりと物を言うとこも意固地なとこも……この黒い髪も瞳もよく似てる…」

「……!!?……」

いきなり唇を塞がれる。離そうと肩を押し退ける。

「‥何しやがる!」

睨み据えると潤んだ碧い瞳から制服の上へと涙粒をポタポタと零した。

「……オイラ、ずっと一人で待ってんだ。もう会えないかも知れないアイツを……」

寂しさは理解出来る。しかし俺は何も与えられない。
隣り町であるココから全力で走り通したとしても三十分はかかる。
こいつ構っていたらナルトを待たせるハメになるのは目に見えるが…放ってはおけない。


………中途半端な優しさを見せちまうのは、悪いクセだ。



「俺には大切な奴がいる…。」


「分かってる、今だけ…今日だけでいいから一緒に居て来れないかい?……そしたら、もう二度と…お前の前には現れない、と約束するぞ、うん!」


「…少しだけだぜ。」


「…サスケ、……有り難う…――」

唇をまたもや奪われるが何故か抗う事も拒絶する事も出来ずにいた。

午前中にナルトとあんな事をした余韻に身を余していたのかも知れない…。


懐かしい唇の感触…


一度は身を結び
幼いながらも抱いた想い。


制服の釦を外し広げ、俺の胸へと口付けを落とすも痕跡は恋人の為と残さず、柔く淡くと掠めてゆく……。

ナルトに触れた時
あんなに胸が高鳴ったが……今は何ひとつ変わらない鼓動…‥


デイダラの寂情を惰性的に受け止め、天井を見つめる…


金属音を立て、開口された衣へと手を入れ、取り出された滾りに肌を徘徊させていた唇や舌がせっつくように先端や筋を刺激する。

「サスケの…すんげェ硬ェ…。流石十代だな、…うん。」


舌を浮かせ口開くと肉筒を口腔に含み、上下に顔を動かした。長く束ねた金糸が揺れている。

ねっとりとした舌が纏いついて射精を促す最中、浮かび上がるのはナルトの姿だった。


あの場所で町の灯を眺めつつ俺を待ってるのだろうか?


こんなエロい事されちまって、弾けそうに硬くなってる俺が情けねェ…


ナルトに合わせる顔がない……。



そう思ったら
舌を這わせ口に含まれた俺が萎みだした。



「…サスケ?」


「……悪いが、もう止めてくれないか?
話なら、いくらでも聴く。側にいろと言うなら毎日でも居てやるから……止めろ。」


「………ごめん、オイラお前に甘えちまった、お前に大切な奴がいるってわかってんのに……、こんなコトしてごめんな。」

「……――。」



ナルト……
……すまない、今夜は逢えない……

逢いたくないんだ……。

こんなみっともねェ、半端な感情に流された今夜だけは……――





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