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Promise-6※シカマル


地震が止んで地割れを避けて走って走って走り続けていた。


『後少しーだな‥』

そう思い息を切らしつつ弱まった足の速度を気持ちあげた、その時、赤い空が陰りをみせ、色を変えた。

心なしに失速して眺めた空は
真っ黒い雲の隙間から時々、赤い光漏れてる程度で…

その後、この町だけ避けて落ちた光の柱は
マジヤベー感じなのに何故か綺麗だった。


そう思っちまったのは余りの恐怖で
違う世界の景色を見てる気がしたからかも知んねーな…。



降り出した灰黒い雨…
雨に色が混じってるなんて……よ。



流石に混乱しだしたか、家を亡くしたかで逃げ惑う人々に途中で揉まれる。


酷く泣き叫ぶガキの声。


ん?…なんだ、はぐれちまったんかよ?



そんなガキにシカト決め込んで我先にと急ぐ大人達。


誰かあのガキ見てやりゃあいいのによ。



「チッ、めんどくせー‥」


人の波間を掻き分け泣き叫ぶガキを抱えあげ肩に乗せる。


「しっかり掴まって父ちゃんか母ちゃんの名前を叫べ。…オレも手伝ってやっからよ?」

「……う‥ん。」


明りは雷光だけ。


どしゃ降りの雨の中
後少しの距離まで来た秋桜畑とは正反対の方向に足を向け歩き続ける。


避難するとしたら
オレ達が通ってた学校だよな?




このガキの両親の名を叫びながら。





アイツが無事である事をひたすら祈りつつ…


早くガキの家族が見つかるよう、祈って。






漸く掛け声に気ついた母親を発見。


こっちに向かい
泣きながらにオレに礼を言う。


ガキを肩から降ろして渡す。


「今度はしっかり手ェ握っとけ。アンタも母親ならよ、テメーの大事なもんは手離すなよ?」

目上の奴に大しての口調が普段と違って、いくらか荒々しくなっちまったのは、最期が近いセイ。



すぐに背中を向けて
半分以上もの距離に変わっちまった約束の場所へと走る…


けどよ、
雷が止んだおかげで、さっきよか視界が悪くて行き交う連中に邪魔される。


避難場所近くで
反対方向に行く奴なんてオレぐらいしかいねーしな。



方向さえ良くわかんねーぜ。
雨はうぜーし真っ暗でよ。



  「キャウンッッ!!」


「ん…?」



どっかから子犬の鳴き声がした。同時に水にバッシャっと落ちる音。

雑踏の中で聞こえた
あの鳴き方とこの水跳ねる大きな音からして蹴られたか、踏みつぶされたか……だな?



もしかしたら、赤丸……か?



それならキバが近くにいるっつー訳だよな?



あー…、でもキバがいるんなら蹴られたか踏まれたかなんてしねーか。




しっかし、……大丈夫なのかよ。


いくら最悪が近ェとしても、気になっちまってた。どんなに小せェ命でも生きてんだ。



暗い足下を見て急いでた。キバも気になっけど犬っころの様子が何だか凄ェ気になって。


コッチに向かってくる……つーか、クンクン匂いを嗅ぐ鼻を鳴らしてオレの方にふらふら動く白いもんが見据えた視界に入った。


「…く、…くぅー‥ん」



「赤丸じゃねーか!?」



人を押し退けて慌てて走り、赤丸を抱き上げた。


雨にずぶ濡れて
白い毛が灰色になっちまった子犬はガクガク震えながらもオレに何かを訴えかけていた。


「キバは…どこだ?…お前もはぐれちまったのかよ?」


「…ワ‥ン…」『…コッチ…マッスグ……イソイデ、……マッテル…』



「…あ?」


何だ、…今の声…………『 赤丸 』…かよ?

そんな訳、ねーよな?

犬が喋るなんて有り得ねーしよ。

『…チカラ…キュービカラ…カリテ…ハナシ…カケテル…』


「キュー…ビ?、この町の守り神とか言われてる有名な自衛隊の兵器か?」


『…アンナイスル…イソゲ…』


「お…おう、分かった。頼むぜ、赤丸。」


オレの手からすり抜けた赤丸は、水溜まりをパシャッと小さな四本足で弾いて走りだした。

赤丸の身体の毛が何となく薄い橙色の発光を纏ってた気がしたのと、人の波が赤丸を避けてたのが不思議だった。


オレは赤丸の後を追って急いで走った。


アイツの待つ場所へ。



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あきゅろす。
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