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Surely tomorrow(明日は…)


「オレ達も会いに来たぜ!なァ、赤丸!」

「ワン!!」

キバは己が合掌した直ぐさま赤丸の前足を取り持ち、
肉球を合わせ目を瞑る。

その隣へと踏み出し並んだシカマルも静かに掌を合わせ心の中で冥福を祈っていた。



「トリはサスケな!」

最後は初からと伝えるようにキバが墓前を空け振り返りざまに明るく笑った。


その催促が俺の焦りを掻き消してくれた。

キバの明朗さはナルトに何処となく似ていたからか…





空いた場に進み
サクラへの様々な思いを乗せ、目を閉ざす。



サクラは特別だった…

友として…

異性ではあったが
恋愛としての意識はなく、恋だの愛だのな関係で崩しちゃならねぇ何かがあった気がする。


あの時、
重ねた口唇を僅かでも拒まなかったのは決して同情からではなかった。


サクラの存在と
気持ちを俺の中に遺しておきたかったのかも知れない…




もしかしたらナルトは
把握してたんじゃねーのか?

アイツに内蔵された
発信機は万能だからな…


「サスケくんを連れて来てやった私に感謝しなさい!デコリンちゃん!」

顔をあげ眼睛を微かと広げた刹那、得意気とする、いのの甲高い声が響き、ヒナタがクスリと笑った。


いのは誰よりも
サクラと仲が良く、下らない事で競い合っては互いを認め合っていた。

ナルトはそんな関係が羨ましいと、以前に零してした。



「じゃあまた来っからよ?」


「赤丸のだけどジャーキー、今度は持ってまた来んぜ!」


「私もー、気が向いたら…また来てあげるわ。だ.か.ら、化けてでないでよ!調子こいてサスケくんの枕元に立ったりしたら‥…
本当にタダじゃおかないだから!」


「…もうー‥、いのちゃんったら。………
うん、…私も‥…また来てもいいかな?」


「……また来ようぜ。」

「サスケくんが行くならぜったい行くわよー!!」


「あー‥立派な猛獣使いになれそーだな?。サスケはよ…」


「何よ、シカマルったら恋する乙女を猛獣だなんてあんまりにも失礼すぎるじゃない!」


「キーキーキー‥…ったく、めんどくせー生き物だな、女ってのはよ。」


逃げるよう背を向けたシカマルに連れられ帰路へと辿る。


暴言を吐いたものの、女二人を家まで送り届けるのが当然の礼儀だと主張するシカマルに付き合い、無事二人を家先まで送ったあと

数歩後ろを歩くシカマルとキバの声が流れてきた。


「…赤丸の散歩コース明日だけ変更してくんねーか?」


「ああ?、何処にだよシカマル。」


「ん?、……秋桜畑ってまだあるのかって、思ったからよ。」


「わかんねぇけどあんじゃね?」


「…じゃあ、話してー事もあるしよ。
明日の朝の散歩は…そっち、な?」


「秋桜見ながら朝食にジャーキーなんて豪華だな!」


「…実、はよ、…お前に渡してーもんとかもあるんだ…」


「えっ?なんだって?聞こえねーよ!!」



キバは耳が遠い…

だからか会話も大きくとなり静寂と化した空間に響いていた。


だが
シカマルの呟き声は聞き取る事が出来なかった。



あの空襲以来……


キバの片耳は完全に聴覚を失った。


戦争の被害で……







「…じゃ、よ。またな、サスケ」


「おう、お休み。またなァ!サスケー」


「…ああ。」


会話は一切聞いていない素振りで横目を流したのみ、短い句を発して岐路となる道端で奴らと別れた。



暗い佇いとなっている時間、灯一つない家の戸を放つと何故か暖かい空気に見舞われた。

まるで
兄、イタチが求めたものが存在したかに感じた…


足音を極力立てずと階段を昇り、自室の扉を開き床へと落ち着くが寝つけずに徒に時間を過ごす。



一度起き上がり
カーテンを開けば
窓辺から夜空を見上げ佇んでいた。


暗い部屋の中
自然の光のみが薄っすらと闇に馴れた眼を照らす。




ナルトは
何かを託してサクラに制帽を捧げた…



滅び行く世界で

一体、あいつは何を思い、何を願ったんだ…?

先に逝ってしまった
サクラに……







脳裏に沸く様々な事柄の答えが出ない侭…

瞼を閉ざすと
ナルトと過ごした日々が不意に脳裏に広がっていった。


短かったが楽しかった。


二人で暮らした小さな空間は疲労さえも癒え、ただただ幸せだった。


あいつを抱いた温もりが蘇る…


全身に……

あいつの笑顔が浮かびあがる…


いつでも心から笑ってた。

笑い合っていた…



色々なナルトが俺の中に巡ると胸が綻び…──


微か口隅上がったかと思った時分、
いきなり眠気に襲われ、床へと身体を預けた途端、睡魔に意識を奪われた。








……──そして











閉め忘れたカーテンの所為なのか、やけに眩しさを感じ目を醒ます。






窓を照らす
異様にデカくて
赤い太陽と
見た事のない朝空の色に刮目せずとも
背筋が強張った…──

『見たコトがねェ、信じらんねーくれェの
すんげー真っ赤でムチャクチャでかい太陽が空一面に広がった朝焼けが終わりの日の合図だってばよ!』






……これが


 その
合図とやらなのか…?



だとしたら…



『あと、2、3日でおしまい』






「一日、早いぞ…
  ウスラトンカチ」














明日があると信じていた。


──…誰もが、皆

当然のように……





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