いのとヒナタ
「あー、今日も疲れたわね〜」
「…いのちゃん、お疲れ様‥」
「アリガト。ヒナタも、おつかれ。」
「…うん。」
私といのちゃんは国からの支援で配給された食糧の配膳を手伝っていて、それがやっと終わって避難所にもなってる自衛隊の駐屯所…… ううん、…私の…私達の母校から家へと帰る道を歩いていました。
「ヒナタァ、あんた余りにもサービスいいからさあ、奉仕活動してたアタシ達の分のカレー、具もルーもなくてぇ殆どご飯で参っちゃったんだけど‥…。」
「…ご、…ごめんね。いのちゃん…。明日は気をつけるから…、ごめんなさい。」
「…でも、美味しかったわ。」
「…う、うん。」
「学校が終わったら寄り道して、アレが食べたいコレが食べたい…なんて皆でお喋りして―――…‥、そういう生活が少し前までは当たりだったのよね。」
「…………うん。」
いのちゃんの言いたい事、思っている事はそれだけで理解できた。
今は食べ物も飲み物も選べない。
嫌いな物さえ口に出来れば有り難いと思う。
生きているって大変だけど幸せさえ感じる。
少し前まではわからなった。
少し前までは……
私といのちゃんの隣にはサクラちゃんがいた。
いのちゃんとサクラちゃんは、小さな頃から仲が良くて、よく口喧嘩してたけどそれは本当に仲が良くてで。
私はいつも一歩後ろの場所で二人の楽しそうな会話を聞いて笑ってた。
二人が言い合っていて決着がつかない時は
必ず、私に訊ねてきた。
声を揃えて「ヒナタはどう思う?」って。
返答に困ってオロオロと怯えたように二人から目を逸らして
俯いて、どっちの意見に賛同していいか悩んで……
答えが出なくて
ごめんねの涙が出そうになると、
二人して宥めてくれて
結局は「バカバカしいから…」って討論は終わりになった。
いつの頃か
二人はサスケ君の事で言い争うようになっていた。
どっちがどれだけ好きか。
どっちがサスケ君に好かれているか。
競うように小さなお洒落をしてサスケ君に話しかけるんだけど、
サスケ君は興味はないみたいでいつもスポーツや勉強に勤しんでいた。
時たま、誰かを思っているみたいな切なそうな瞳で空を見上げてはいたけれど……
サクラちゃんが好きって風に気さくに声をかけてくるナルト君はサスケ君を恋のライバルとして勝手に張り合っててサクラちゃんがサスケ君の名を出すたびに不機嫌な顔をしながらサスケ君を意識してた。
私はそんなナルト君が好きだった。
ううん、今でも好き……
だからナルト君が今どこにいるのか、何をしているのか知りたい。
「元気…なのかなぁ…」
「誰が?サスケ君なら昨日みかけたわよ〜」
もう当分の間は開くことのないファーストフードのお店、その隣の本屋さん。コンビニエンスストア…
学校の帰り道、小腹を空かしては立ち寄った場所が並ぶ道で呟いた声にいのちゃんが朗らかに答えた。
「あ…、そうなんだ、元気そうだった?」
「ナルトとはどうなったのか聞きたかったけど、そんな雰囲気じゃなかったわ‥。」
「…そう、なんだ?」
「寂しそうなサスケ君に私の魅力をわかって貰えるチャンスかな〜、なーんて思うんだけどサクラにズルイって怒られそーじゃない?」
「うん、…そうね。サクラちゃん、きっと空の上から怒るよ。」
「ねぇねぇ、寄り道していかない?」
「…どこ…に?お店なんてどこもやってないよ。」
「や〜ねぇ、お店なんかじゃないわよ。決まってんじゃない。」
「…あ、……うん。」
「今夜は星が綺麗だし、あの丸い月がデコリンちゃんみたいだし、ね。」
私達は帰る方向とは逆を向き、道端に咲く花を途中で摘みサクラちゃんが眠る高台へと足を急がせていた。
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